遠隔放射線治療計画支援 : 当院の現状と将来

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  • Remote Radiation Planning Support System
  • エンカク ホウシャセン チリョウ ケイカク シエン : トウ イン ノ ゲンジョウ ト ショウライ

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抄録

日本の放射線治療の問題点として, 高齢化に伴うがん患者の増加と放射線腫瘍医, 医学物理士等のスタッフの不足が挙げられる. さらに, 技術の進歩により, 定位放射線治療, 強度変調放射線治療, 画像誘導放射線治療などの高精度放射線治療が普及し, 放射線治療そのものが高度で専門性の高い, 複雑なものとなってきている. これらに対応する放射線腫瘍医の負担は, 予想をはるかに超えて重いものとなっている. また, 地域がん診療連携拠点病院や地方中核病院においては, 高額な予算を使って高精度放射線治療機器を導入したにもかかわらず, 放射線腫瘍医の適切な人的供給ができず, 機器の性能を十分に発揮できていない施設も多く, 非常勤医師による診療支援によってかろうじて治療を実施できている施設も少なくない. 近い将来においては放射線治療専門医数の絶対的な不足は解消される見込みは少なく, 限られた人的資源の下で, 放射線治療専門医の有効利用や作業効率の改善を迫られているのが現状である. この問題を解決する一つの方法として, 情報工学技術(Information Technology, IT)を利用した遠隔放射線治療支援の導入が挙げられる. IT を利用した遠隔医療は, 放射線画像診断や病理診断の分野において広く実用化されており, 放射線治療分野に関しても徐々に普及しつつある. 遠隔放射線治療支援は, 放射線腫瘍医が不足している施設に対し, 放射線治療の品質向上とがん医療の均てん化に寄与しうる有用な方法のひとつであり, 遠隔放射線治療支援を安全かつ高品質に運用することを目的として, 平成22年に日本放射線腫瘍学会(Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology, JASTRO)より遠隔放射線治療計画支援ガイドラインが作成された. ガイドラインでは, 遠隔放射線治療計画支援とは画像を主とした医療情報を電子化し, 様々な通信技術を用いて異なる複数の施設間において医療情報を転送し, 放射線治療計画を中心とする放射線治療の診療支援・評価・指導などを行うものと定義され, 運用時に守るべき指針が示されている. また, 平成24年3月に作成された「がん対策推進基本計画(案)」では, 放射線治療の推進として, 「医療安全を担保した上で, 情報技術を活用し, 地域の医療機関との間で放射線療法に関する連携と役割分担を図る」とされており, 今後ますます情報技術を活用した連携が重要になると考えられる. 九州大学病院(福岡県福岡市, 以下, 本院)と九州大学病院別府病院(大分県別府市, 以下, 別府病院)では, 2011年4月より, 本院から別府病院に対する遠隔放射線治療支援システムを導入し, 実用化されている. 九州大学病院での概要を述べ, 遠隔放射線治療支援の今後について論ずる.

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