森林吸収における炭素クレジット(J-VER)の取得と運用の課題 : 九州における自治体の取組み事例

  • 石井 博也
    九州大学大学院生物資源環境科学府環境農学専攻森林環境科学コース森林政策分野
  • 佐藤 宣子
    九州大学大学院環境農学部門森林環境科学講座森林政策分野

書誌事項

タイトル別名
  • Issue in certification and utilization of carbon credit (J-VER) by forest absorption : The case study of municipalities of Kyushu
  • シンリン キュウシュウ ニ オケル タンソ クレジット(J-VER)ノ シュトク ト ウンヨウ ノ カダイ : キュウシュウ ニ オケル ジチタイ ノ トリクミ ジレイ

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抄録

J-VERとは, 日本国内での森林吸収やエネルギー削減によって創出された炭素クレジットであり, 2008年に環境省が制度化し, その認証が始まった。本稿の目的は, J-VERが自治体の森林経営や地域振興へ及ぼす影響とその運用の課題を明らかにすることである。調査地として, 九州の自治体を選定し, 聞き取り調査と資料収集を行った。調査の結果, 以下のことが明らかとなった。J-VER取得の目的は, どの自治体も森林整備を基本としながらも, 2県では県内のモデルとなること, 町村ではJ-VER取得による地域振興であった。販売に関しては, 先進的にJ-VERを取得した小国町と諸塚村では, 先駆者利益が存在すると考えられるが, 全体的に低迷している。そのため, J-VERの付加価値化, イメージ戦略, 県主導の販売促進が重要となると考えられる。販売収益の使用法に関しては, 福岡市が全て森林管理費として使用する一方で, 小国町が都市住民との交流事業費や林業振興費として使用しており, 違いがみられた。また諸塚村では, J-VERの販売収益が年間村有林管理費の10%を占めており, より販売が促進された場合, 特に条件不利地での森林経営において, J-VERの収益は重要になると考えられる。

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