歯科インプラント術後におこりえる上顎洞炎に対する,術前に行う鼻内視鏡手術

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  • Minimally Invasive Endoscopic Middle Meatal Antrostomy for the Prevention of Maxillary Sinusitis in Association with Dental Implantation in the Posterior Maxilla : A Proposal

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抄録

上顎のインプラント治療の合併症として最も頻度が高いのは上顎洞炎である.インプラント治療によって上顎洞底の粘膜に穿孔が生じても必ずしも上顎洞炎が生じる訳ではない.逆に,上顎洞底粘膜に穿孔が生じなくとも上顎洞炎が起きることがある.上顎のインプラント治療後に上顎洞炎が生じるかどうかを決定するのは,上顎洞自然孔である.上顎洞底挙上術などによって生じる洞内の粘膜の浮腫が自然孔にまで及び,自然孔が閉塞されたならば上顎洞炎が生じる.上顎洞自然孔の鼻腔側は鈎状突起や篩骨胞に挟まれており,軽度の粘膜浮腫によっても閉塞されやすい.鈎状突起の過剰発育,篩骨胞の過剰な含気化,中甲介の含気化や外側への彎曲などが認められる患者では,上顎洞自然孔周囲の粘膜浮腫によって一層,自然孔が閉塞されやすい.したがって上顎洞底挙上術を行う場合には,あらかじめこれらのリスクファクターを除去しておくのが好ましい.今回我々は,日帰り手術が可能な保存的な内視鏡下手術を提案する.鈎状突起の下方から後方を切除して上顎洞自然孔を明視下に置き,上顎洞自然孔を四方に広げる.このようにして開大されたウィンドウの前縁は鼻涙管隆起の後縁,上縁は眼窩下壁・内側壁移行部,後縁は篩骨胞の前面,そして下縁は下甲介の付着部になる.次いで,中鼻道前端付近のスペースを確保するために中甲介の前縁〜前下方をトリミングする.本術式は重篤な合併症が生じにくい.手術侵襲も少なく,上顎洞内に高度の病変が認められない症例では,上顎洞底挙上術を行う前の上顎洞炎予防処置として優れた術式と考えられる.ただし,高度の鼻中隔彎曲症がある症例には本手術は適さない.

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