英語症例報告の語彙的・テキスト的特徴 : 予備調査の結果から

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  • The Lexical and Textual Characteristics of Medical Case Reports: A Preliminary Investigation

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抄録

本稿では英文の症例報告108本を対象としたコーパス分析の結果を報告する。まず,筆者らによる医学英語カリキュラム開発のこれまでの取り組みを概観し,次に3本の症例報告を対象とした談話分析,および108本すべてのコーパスを対象とした予備的分析の結果を報告する。最後に,本研究の教育的示唆を考察する。 本稿のリサーチクエスチョンは以下の2点である。 1. 症例報告にはどのようなテキスト的特徴が見られるか。 2. 症例報告の小規模な初期コーパスから,主要な語彙項目や定型的言語表現の特定は可能か。 分析結果によれば,症例報告で用いられる医学用語は難解なものもあるが,全体的な構成や展開は極めてシンプルで,3つの主要セクション(緒言,症例提示,考察)および抄録と参考文献で構成されている。緒言では当該疾患についての概要を述べ,新しい症例の導入説明を行う。症例提示では症例の顕著な特徴を記述し,考察では関連文献を引用しつつ,その症例が興味深い理由を論述し,最後は示唆で締め括る。詳細なコーパス分析により,症例報告において広範囲かつ高頻度で出現する用語や表現の特定が可能である。例えば,非定型的症例の導入説明には,“We report a case…” のような表現が用いられる。また,考察で著者の示唆が記述される部分では,‘may’ や ‘can’ のような法助動詞とbe動詞のコロケーションが頻出する。 本稿の教育的示唆として,症例報告を読むことと実際に書くことの違いを考察する。症例報告の読解と分析は医学教育の比較的初期から開始できるが,症例報告を書くことは,学部3年生の段階では難易度が高すぎると思われる。しかしそうした学生であっても,まずは模擬患者の情報を用い,ごく一般的な症例について書く指導から始めることで,症例報告における症例提示の技能を効果的に伸長できるだろう。さらに次の段階では,実際の症例報告を書くために,研究者が自分のニーズにあった小規模コーパスの構築を行えるよう,基本的なコーパス分析の訓練を行う方法について考察する。

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