南琉球宮古多良間方言におけるピッチ上昇 : 複数の韻律句が連続する場合のピッチパターンの記述

書誌事項

タイトル別名
  • Pitch Rising in Miyako-Tarama Ryukyuan: Description of the Pitch Pattern in the Case of a Phrase Sequence
  • ミナミリュウキュウ ミヤコ タリョウ カン ホウゲン ニ オケル ピッチ ジョウショウ : フクスウ ノ インリツク ガ レンゾク スル バアイ ノ ピッチパターン ノ キジュツ

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説明

本論文では,南琉球宮古多良間方言におけるピッチ上昇に関わる2つの現象に焦点を当て,それらを統一的に記述することを目指す。従来,多良間方言は3つのアクセント型の区別を有し,それらの区別は韻律句における下降の有無と位置とによって実現されると記述されてきた。ところが最近になって五十嵐(2015),松森(2016a, 2016b),青井(2017)などによって,当該方言でピッチの上昇が観察される場合があることが報告されている。 本論文では,まず,複数の韻律句が連なる場合のピッチパターンを観察し,多良間方言におけるピッチ上昇が生じる条件を記述する。観察の結果から,多良間方言のピッチ上昇の特徴は次のように要約できる。すなわち,①ピッチ上昇が生じるのは必ず2つ目以降の韻律句である;②ピッチ上昇が実現するためには,当該韻律句の左端の語が有アクセント語であり,かつ当該韻律句よりも前の句でアクセントによるピッチ下降が実現していることが必要である;③ピッチ上昇が生じる位置は下降が予測される位置の1モーラ右である。 本論文では,さらに,属格助詞=nuを介する名詞句X=nu Y(「X=nu Y 構造体」(五十嵐2015))のピッチパターンの分析もおこなう。結論として,「X=nu Y 構造体」のピッチパターンは,被修飾・修飾関係にある2つ以上の韻律句が1つの韻律的単位(メジャー句Major Phrase)を形成し,修飾語にあたる語根Yを含む韻律語に「アクセント核」が付されると解釈することによって妥当に記述できることを提案する。

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