字体に生じる偶然の一致 : 「JIS X0208」と他文献における字体の「暗合」と「衝突」

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タイトル別名
  • Coincidence and clash of jitai
  • ジタイ ニ ショウジル グウゼン ノ イッチ JIS X0208 ト タ ブン

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説明

既存の漢字字体を改造したり,写し誤ったばあいや,新しい漢字を創作したつもりでも,過去に同じ字体が存在していることがある。これは,通時的に見れば伝承関係があったかのように見え,「国字」「国訓」の区別,「異体字」「誤字体」の差異や「多義字」の問題にも関連する事象である。本稿では,転記された際に字体に変化が生じた例として,筆者が究明した「JIS X0208」に含まれる「堽」以下の10字を取り上げる。それら当時一般の漢和辞典に載っていなかった字について,「JIS X0208」の引用元資料とは関係をもたないそれ以前の諸文献に,字体が偶然に一致する用例を探索し,偶然の一致がどの程度発生するのかを確認する。用例を,(1)同一音義の字が個別的な発生・変化により結果的に同じ字体となる「暗合」と,(2)音義が異なる二つの字が個別的な発生・変化により同じ字体となる「衝突」とに分類する。10字すべてに字体上の偶然の一致は見つかり,高い割合で発生することが判明した。暗合が6字,衝突が8字,そのうち暗合,衝突ともに確認される字が4字存在した。暗合は字体の創作や変化に一定の傾向が存することを示す。衝突は,字を創作したり,誤記したばあいでも,字体の衝突は避けがたいことを反映し,多義字や国訓の一因とみられる。

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