<研究ノート>戦時下の生活雑誌 : 『時局月報』と『国防国民』

書誌事項

タイトル別名
  • A Living magazine in wartime Japan : "Jikyoku Geppou" and "Kokubo Kokumin"
  • 戦時下の生活雑誌--『時局月報』と『国防国民』
  • センジカ ノ セイカツ ザッシ ジキョク ゲッポウ ト コクボウ コクミン

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説明

本論文の目的は、戦時下の生活雑誌――月刊『時局月報』『国防国民』の意義を検討することにある。戦時下の日本では「生活雑誌」という言葉は、家事のための雑誌ではなく、政治経済雑誌を意味していた。『時局月報』とそれが名称変更した『国防国民』の両雑誌は、長谷川国雄(一九〇一―八〇)が編集し発行したものである。長谷川は、一九二九年から三六年にかけて、経済雑誌『サラリーマン』を発行していた。『サラリーマン』の独自性は、新中間階級の読者に対する経済知識の啓蒙にあった。『サラリーマン』は、官憲による不法な弾圧によって休刊を余儀なくされてしまった。しかし、『時局月報』と『国防国民』は、『サラリーマン』の直接の後継誌として、同じ編集方針を継承するものであった。さらに、両誌は、統制経済の観点から、人的資源と物的資源の再配置と改善を提唱するものだった。  両誌には、多くの著者が論説や記事を寄稿した。例えば、三木清、風早八十二、花田清輝、大河内一男、野崎龍七、大宅壮一らが寄稿した。彼らは戦時下の日本の統制経済と社会の諸局面に対して、洞察力溢れる分析を行った。とりわけ、大河内一男は最も精力的な寄稿家であり、やがて両誌いずれもの共同監修者になった。当時、大河内一男は、社会政策の観点から国民生活の水準に関心を寄せていた。大河内は、戦時下経済の発展に与える国民生活の効果や、また日本の統制経済が希少資源の有効な使用の確保ができるための国民生活の改善について考えていた。大河内の意図していたところと、『時局月報』と『国防国民』の編集方針とが一致していたのである。  われわれは、両生活雑誌の内容と、またこれらの雑誌とその協力者大河内一男が、戦時下日本の統制経済構造の発展にいかに貢献したかを研究する。

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