コルチャックの孤児院ドム・シエロットの設立と歴史的背景

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タイトル別名
  • コルチャック ノ コジイン ドム ・ シエロット ノ セツリツ ト レキシテキ ハイケイ
  • Establishment of Korczak’s orphanage Dom Sierot and Historical Background

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抄録

本稿の目的はヤヌシュ・コルチャックが院長を務めた孤児院ドム・シエロットの設立過程について,当時ロシア支配下にあったポーランドワルシャワの児童保護活動の文脈の中に位置づけながら明らかにすることである。本稿から以下の点が指摘できる。第一に,ドム・シエロット設立母体である“ 孤児救済” 協会は,ロシア革命以降,多数の民間団体が組織された時期に設立された。第二に,19 世紀後半から20 世紀初頭にかけて乳児施設*1 や保護施設*2,技 術教室*3 や裁縫教室*4 といった通所型施設が設立された。しかしこれらにおける部分的な保護ではなく,コルチャックは子どもの生全体を保障することが必要だと考えドム・シエロット設立に関わるようになった。第三に,ドム・シエロットは当時のワルシャワの孤児院と比較して,子どもを理解しようとした点,子どもが主体的に,共同して生きることを目指した点,個の生活を保障しようとした点で特徴的である。 *1 乳児施設(zlobek)…両親が共働きあるいは何らかの理由で世話をすることができない貧困家庭の3歳までの乳幼児を日中預かる施設。 *2 保護施設(ochrona)…貧困家庭の3歳から7歳の幼児が通う施設で,様々な遊び以外に,年齢に応じて,読み書きや体操,宗教の勉強をした。 *3 技術教室(sala pozytecznych zajec)…貧困家庭の7歳から14歳の男子が通う施設で,大工,鍛冶,金具業,手工業といった職業教育の他,国語,算数,宗教などの一般教育が行われた。 *4 裁縫教室(szwalnia)…貧困家庭の7歳から14歳の女子が通う施設で,裁縫,料理,洗濯,アイロンがけといった家事仕事の他,体操,音楽,図画などの授業も行われた。

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