オーチャードグラスの新品種「まきばたろう」の育成とその特性

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タイトル別名
  • Breeding of "Makibataro" Orchardgrass and its Characteristics
  • オーチャードグラス ノ シン ヒンシュ 「 マキバタロウ 」 ノ イクセイ ト ソノ トクセイ

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抄録

農研機構畜産研究部門(旧畜産草地研究所)では機構内における牧草育種の全国分担の中でオーチャードグラスについて寒冷地(南部)から温暖地向き新品種の育成を担当しており,現在までに4品種を育成した。そのうち雲形病・うどんこ病・黒さび病等主要病害抵抗性の中生品種として1981年に育成された「マキバミドリ」は育成後20年以上経過し,黒さび病における新たなレースの出現や新たに発生した黄さび病によりさび病に対する罹病化がみられていた。「まきばたろう」は,「マキバミドリ」以上の病害抵抗性と多収性を目標に,畜草研育成品種・系統と雲形病抵抗性育種母材「Sc-3」の交配母系,畜草研育成品種・系統と黒さび病抵抗性・高嗜好性フランス品種「Lude」の交配母系,九州エコタイプの3つの基礎集団から4世代の母系または集団選抜(表現型循環選抜)を行って育成され,2006年にオーチャードグラス農林11号として登録,公表し,2009年に品種登録した。その主要特性は次のとおりである。出穂始日は,中生の「マキバミドリ」より全試験機関平均で約3日早いが,極早生の「アキミドリII」より約8日遅く,中生の早に属する。収量性は「マキバミドリ」より明らかに優れ,試験期間中の合計乾物収量は青森から大分までの8試験機関平均で「マキバミドリ」比で8%高い。また,すべての試験機関で「マキバミドリ」を上回る収量性が認められ,東北北部から九州高標高地まで適応地域は広い。病害抵抗性に極めて優れており,さび病抵抗性は「マキバミドリ」より優れ,「アキミドリII」よりやや優れる“強~極強”,雲形病抵抗性は「マキバミドリ」と同程度で,「アキミドリII」よりやや優れる“強~極強”,うどんこ病抵抗性は「マキバミドリ」よりやや優れる“強”,炭そ病抵抗性は「マキバミドリ」よりやや優れる“やや強”である。秋の草勢が「マキバミドリ」より優れる。東北における越冬性は「マキバミドリ」と同程度,耐雪性は「マキバミドリ」と同程度の“中”である。乾物消化率は「マキバミドリ」よりやや高い。採種性は「マキバミドリ」と同程度である。極早生,早生の品種と組み合わせて作付されることにより,収穫適期が拡大され,良質な粗飼料生産に寄与することが期待される。

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