動物と人間-文明批評の視点から- : (その二)仏教に見る動物観-阿含経を中心として-

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タイトル別名
  • Tier and Mensch-Unter einem Gesichtspunkt der Zivilizationskritik- : Teil2. Tieranschauung im Buddhismus-Sutta-pitaka als Mittelpunkt-
  • ドウブツ ト ニンゲン ブンメイ ヒハン ノ シテン カラ ソノ2 ブッキョウ ニ ミル ドウブツカン アゴンキョウ オ チュウシン トシテ

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抄録

キリスト教においては、動物は人間が支配するための存在でしかなかったが、仏教では動物はどのように扱われているのだろうか?旧約聖書に記された「モーゼの十戒」中の「汝殺すなかれ」は専ら人間の殺害を禁ずるものであったが、それに相当する仏教の「不殺生戒」は人間のみならず、一切衆生、人間にとって危険な動物さえその対象とし、仏教ではそれらの生き物に対する慈悲の心も説かれている。菩薩に到っては、最終的には生けるもののために自己を犠牲にすることさえ求められている。こうした理念は、因果応報、輪廻転生の思想ばかりでなく、「他者への思いやり」の心から生まれた。この、生けるものへの「慈しみの心」は、他者を自分より一段下に見る「憐れみの心」とは別物である。キリスト教が「愛」を説くのに対し、仏教は「慈悲」を説くと言われるが、「慈」とはサンスクリットの「友」からきた言葉であり、「悲」は同じくサンスクリットの「呻き」からきており、呻き苦しむ者と一緒になって共感する行為のことだという。つまり、仏教は生きとし生けるものを「友」と見なし、人間だけを決して特別視せず、他の生けるものと同列に置いているのである。従って動物にも人間同様、救済への道は開かれているし、宗教的意義も認められている。仏教は、そうした生けるものすべての苦しみを共感する宗教であり、「動物に対する人間の独善的なうぬぼれ」を脱しようとするなら、極めて大きな示唆を与えてくれるように思う。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 21 57-75, 2000

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390009224804595712
  • NII論文ID
    120004838925
  • NII書誌ID
    AN0020011X
  • DOI
    10.18910/4726
  • HANDLE
    11094/4726
  • ISSN
    02865149
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles

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