人類学研究における人格と自己

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タイトル別名
  • Concepts of Person and Self in Anthropological Work
  • ジンルイガク ケンキュウ ニオケル ジンカク ト ジコ

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説明

本稿では、人の概念についての人類学的研究の学説史を、人格と自己という概念の組に注目して整理する。これら二つの概念は、多様な地域やトピックを扱う研究を人類学として理解可能なものとするために必要な枠組みを提供してきた。この語りの枠組みを明示化し、現在における可能性を摸索することが目的である。理論的争点を明確化するための試みとして、筆者は学説の流れを3つの局面の連続として捉える。(1) 社会的人格と心理的自己の対立を想定する「二重モデル」と、ロサルドによる、この対立が当てはまらない非西洋社会の分析によって、これを近代西洋の構築物としで退ける立場の対立。(2)ロサルドとギアツに代表される解釈学的な人の概念研究と、彼(女)らの方法は実際には文化的規範の記述であり、人々による自己の経験を捉えていないとする批判の対立。後者の立場は、実は装いを新たにした「二重モデル」の再導入であると分かる。(3)自己を変動する生産過程として捉え、責任あるエージェンシーの割り当ての文化的過程を分析する試みのあらわれ。このアプローチはまだ萌芽的段階にあるが、西洋と非西洋の二分法と内的自己の絶対化をともに乗り越えようとする批判的人類学の試みとして注目される。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 22 191-208, 2001

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

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