「授業経験を語り合い聴きあう」授業研究のこころみ~埼玉県小学校家庭科教育研究会 鴻巣地区のとりくみから~

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タイトル別名
  • ジュギョウ ケイケン オ カタリアイ キキアウ ジュギョウ ケンキュウ ノ ココロミ サイタマケン ショウガッコウ カテイカ キョウイク ケンキュウカイ コウノス チク ノ トリクミ カラ

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抄録

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昨今、学校の先生の多忙化が問題にされる。書類作成の娯雑さ、会議の多さ、実質的な勤務時間の長さ。それでも、先生たちは元気である。子どもたちのことを語るとき、授業のことを話すとき、先生たちは活き活きとしている。これは、埼玉県小学校家庭科研苧究会の鴻巣地区の授業研究に参加させていただく中で感じていることである。この研究会は小学校の家庭科主任を参加者とし、長年にわたって授業研究に取り組んできた会である。とくに、家庭生活を対象とした家庭科教育の授業研究であることや、参加者が女子教諭のみであることから、生活経験をふくめて自由に語り合う点が特徴である。2004年度以降は、さらなる研究の深化を閉ざして、教員同士が学びあう方法として、アクションリサーチを取り入れた「授業経験を語り合い聴きあう」授業研究をこころみている。本稿はその教師の学び合いについて報告するものである。アクションリサーチについては、家庭科教育においてもすでに研究報告がある(伊藤2004)。教師自身による授業研究の方法として欧米では広く知られており、その依拠する立場によっていくつかの方法があるが、いずれも、教師自身が自ら課題を発見し、それを解決していこうという営みであるといえるであろう。アクションリサーチでは、研究者としての教師(teacheras researcher)が重視される(伊藤他2003)。実践者としての教師と両立する「研究者としての立場」が重視されるのである。さらに、この研究方法では、教師がひとりで授業研究をすすめるというよりは、教員同士、または研究者を含めた複数の教員のグループで、それぞれの実践を題材とした学び合いが行われる。その場合、教員同士の関係および、研究者と教員の関係がクリティカルつまり対等であることが非常に重要とされる。この研究会では、毎年公開授業の発表者を決め、他の参加者がサポートするという形で12月の公開授業研究会を行っている。忙しい勤務の傍らであるため集まる回数も限られている。私が参加した2004年度より前は、その年の発表者(授業者)が作成した指導案を、みんなで話し合いをしながら修正していたが充分ではなかったとのことであった。そこで、私(河村)が提案したのは、アクションリサーチの変形版とでもいうものであった。アクションリサーチでは、通例参加者全員が一つのテーマを共有し、各自がそのテーマに沿った授業を実践することを通して、議論を深めながら自身の問題や課題解決の方法を発見していく。ただし、今回の研究会では、この一般的な方法を行うには、いくつかの制約があると思われた。一つは参加者数が多いということ。通常10人以上の参加者がおり、話し合いを進める規模として大きすぎることが問題であった。さらに、もう一つはその後の研究会の予定が多くはないということ。例年であれば、12月の公開研究会の前に1,2回指導案についての話し合いを持つだけであるという。 この点に関しては、教員の多忙化、勤務時間内にこのような研究会を設定することができないという厳しい状況からすれば、研究会の回数を増やすことは国難であろうと思われた。そこで一般的な方法を柔軟に運用しようとしたのである。アクションリサーチ変形版は以下に示すものである。①すべての参加者が、当該の授業に関してこれまでの授業経験を持ち寄って話す。その際に、おおまかな授業の流れがわかるような指導案またはメモを用意し、児童の様子がよくわかるように語る。②話し合いの中から、当該の授業を進める上でのポイントを探っていく。③授業者の指導案について議論することではなく、各自がその授業を実践するときの糧となるような議論をすることを目的とする。このような方法による授業研究は、参加者同士の話し合いから、各自が何かを発見し、授業者だけの学びではない、すべての参加者が学ぶことを模索したものである。授業者の指導案をみんなでたたくという従来の方法では、参加者全員の学びになり得ないからである。

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