「滅び行く人種」言説に抗する「同化」 : 1920~30年代のアイヌ言論人の抵抗

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タイトル別名
  • Using ‘Assimilation’ to Resist the Concept of ‘Dying Race’ : Strategies of Ainu Spokespeople in the 1920s to 1930s
  • ホロビ ユク ジンシュ ゲンセツ ニ コウスル ドウカ 1920 30ネンダイ ノ アイヌ ゲンロンジン ノ テイコウ

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説明

本稿は,近代日本の「他者像」としての「アイヌ」像を検討し,アイヌ民族(とくにアイヌ言論人)自らがそれをどのように「自画像」として主体的に受容したかを明らかにする。そのことを通して,1920~30年代を中心とするアイヌの人々の言論活動が,支配者側が用いた「同化」概念を「流用」しながら,「滅び行く人種」言説に抗するものに他ならなかったことを主張する。支配者側の「同化」概念に対して,アイヌ言論人は二種類の「流用」をもってして対抗した。それは,支酉己者側の「同化」概念の「流用」に際しての主体性の発揮の仕方において区別され得るものであった。違星北斗は,「野蛮」/「文明」という価値づけ(序列)と結びつかない「血」に基づいて,「和人」と区別された「アイヌ」という「種的同一性」を設定し,それが上位カテゴリーとしての「日本人」に内包されることを「同化」として捉えた。他方で,平村幸雄は,「アイヌ」であることと「和人」であることが両立し得るとするアイデンティティ認識に基づいた「和人化」としての「同化」を主張した。かくして,二種類の「流用」を行うことで,アイヌ言論人は支配者側の「滅び行く人種」言説に対抗し,アイヌとしてのアイデンティティを保持する道を切り拓いたのであった。

This paper examines how the Ainu themselves accept the imposed imageof Ainu as a self-portrait in modem Japan. By doing so, this paper claimsthat the Ainu speech movement of the 1920s-1930s resisted the discourse of`dying race', by `appropriating' the concept of assimilation to a ruling people.In opposition to this concept, there were two kinds of appropriation whichcan be distinguished in the Ainu speech movement. Iboshi created a categoryof Ainu distinguished from Wajin, based on a concept of 'blood' outside thehierarchy of `uncivilized'/`civilized', and conceived assimilation as the subsumptionof such `Ainu' under `Nihonjin' as the superordinate category. Onthe other hand, Hiramura created a unique Ainu identity compatible withbeing Wajin, and asserted that assimilation meant becoming Wajin. By appropriatingthe concept of assimilation, Ainu writers opposed the discourse of`dying race' , and forged a way to retaine the Ainu identity.

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