明治12年甲斐国現在人別調の生国データによる移動分析

書誌事項

タイトル別名
  • An Analysis of Population Inflows to the Kai Domain with Birthplace Data from the 1879 Experimental Population Survey
  • メイジ 12ネン カイノクニ ゲンザイ ニンベツチョウ ノ ショウコク データ ニ ヨル イドウ ブンセキ

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説明

杉亨二が「甲斐国現在人口調」を実施したのは明治12年から13年にかけてのことであった。この調査は国勢調査の嚆矢として,わが国近代統計の黎明期におけるまさに金字塔として位置づけられている。しかし,それが現在の山梨県(甲斐国)のみを対象とし,また把握された人口が常住人口でも現在人口でもないいわば現住居人口という特異な人口であったこともあり,調査結果はその後必ずしも多方面に分析活用されてきたとはいえない。 そのような中,明治30年から20年間統計局長の職にあった花房直三郎は,明治40年に何度か統計学社の総会においてその分析結果についての講演を行っている。その初回講演の中で花房は,出生地(生国)人口による甲斐国への人口移動に関するいくつかの興味深い分析結果を報告している。 周知のように,地域間の移動数には移動の強度だけでなく移動元と移動先の人口規模も関係している。そのため本稿では,移動選好度として知られる人口規模の多寡による移動数への寄与分を調整した指標を用いて各出生地(生国)から移動先である甲斐国への移動の強度そのものを評価することによって,花房がそこで提示している移動に関する一連の知見に関する追検証を行った。 今回の移動選好度による分析から得られた結果は,花房が講演において提起している甲斐国への移動に認められる一連の規則性を概ね支持するものであった。さらに,他国からの移動者による甲斐国内の移動先(各郡)の選択状況についての移動選好度を用いた分析からは,同国への移動が明確な方位性を持つこと,出生地(生国)との接境ラインからの距離に従って移動強度が一般に減衰すること,また男子と比べて女子の方が近距離移動さらには距離に対する減衰の程度がより強いといったいくつかの規則性の存在についても定量的に確認することができた。

収録刊行物

  • 経済志林

    経済志林 86 (3・4), 23-70, 2019-03-20

    法政大学経済学部学会

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