社会人の健康を規定する要因の研究

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タイトル別名
  • A Study on the Factors Determining People's Health
  • シャカイジンノケンコウオキテイスルヨウインノケンキュウ

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抄録

社会人を対象に,健康群と不健康を判別するのに有効な要因の解明を主な目的として,多変量解析による判別分析を進めてきた。厳密にいえば,社会人の健康についての自己評価を規定する要因の分析ということになろう。結果については,以下のように要約される。1.健康群と不健康群の特性は,特に運動・スポーツ生活,健康生活,生活満足度に関して差が認められた。その反面,生活状況や食生活,健康意識などについては特徴的な違いはみられなかった。健康群は,不健康群に比較して,(1)生活の中でからだを動かすことやスポーツを実施する者が多い,(2)健康度診断指標による健康度の水準が高く通院や入院の経験者が少ない,(3)家庭や職場,地域社会での生活,友人関係,自分の生き方などに満足している者が多い,といった傾向がみられた。2.外的基準と有意な単相関を示した変数は,男子29,女子27であった。特に,男子は「身体的健康」,「現在通院」,「身体的障害」、「過去通・入院」,女子は「身体的健康」,「精神的健康」,「現在通院」,「過去通・入院」など,健康生活に関する変数の相関が高い。これらは,社会人の健康・不健康を直接的,間接的に規定する要因とみられる。また諸変数の連関構造については,男女とも運動・スポーツ生活要因,健康生活要因,生活満足度要因において構造的に連関する変数が比較的多い。女子の場合は,食生活要因についても同様の傾向がみられる。3.説明変数全体による外的基準の判別力を示す相関比は,男子0,672,女子0,609であった。この値から,説明変数の有効性はある程度証明された。4.偏相関の結果によって,外的基準に対する変数の判別(規定)力をみた。60変数のうち,男子は25,女子は26の変数が有意な偏相関を示した。男子は,「現在通院」,「身体的健康」,「身体的障害」,「仕事・家事での運動量」,「結婚」,「通勤方法」,「友人関係」,女子は「身体的健康」,「精神的健康」,「過去通・入院」,「現在通院」,「仕事・家事での運動量」,「結婚」,「職業」などの変数が高い偏相関を示した。これらは,社会人の健康を規定する有力な要因といえる。また判別力順位によって説明変数は,(1)男女とも高い判別力の変数,(2)男子に高く女子に低い変数,(3)女子に高く男子に低い変数,(4)男女とも低い変数の4つのパターンに大きく分けらた。5.男子の場合,職場生活に関する変数12を追加して分析した。その結果,10変数が外的基準と有意な偏相関を示した。特に,「職場の環境」や「仕事の単調性」,「職場の騒音」は高い判別力を有することが明らかになった。6.カテゴリーの寄与については,男子は職業「農林漁業」,身体的健康「上位」,通勤方法「徒歩・自転車利用でからだを使う」,現在通院「していない」,仕事・家事での運動量「多い」などのカテゴリーが,健康群に大きく寄与している。女子は,身体的健康「上位」,精神的健康「中位」,仕事・家事での運動量「多い」,過去通・入院「ない」,生活環境「かなり満足」などが健康群に寄与している。また,男子の職場生活要因に関しては,職場環境「かなり良い」,仕事の単調性「単調ではない」「あまり単調ではない」などのカテゴリーが健康群に大きく寄与している。なお反応数の関係から,寄与の仕方について疑問と思われるカテゴリーがいくつかみられたが,この点は以後再検討したい。最後に,本稿においては健康のとらえ方が極めて主観的であったこと,説明変数は生活形態に関するものを選定したとはいえ,そこには健康についての意識や生活満足度なども含まれておりもっと体系的に精選されるべきではなかったか,などの問題点が指摘されるかも知れない。これらの問題点についても,今後の研究課題としたい。(本研究は,昭和58年度特定研究の補助を得て行われたものである。)

収録刊行物

  • 健康科学

    健康科学 6 79-95, 1984-03-30

    九州大学健康科学センター

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