フィリピン埋葬遺跡出土人骨コラーゲンを用いた炭素・窒素安定同位体分析

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  • A. Garong
    Faculty of Social and Cultural Studies, Kyushu University
  • S. Mihara
    Shirakawa analysis center, Institute of Accelerator Analysis Ltd.
  • F. Datar
    Anthropology Department, University of the Philippines, Diliman
  • W. Ronquillo
    Archaeology Division, National Museum of the Philippines
  • 小池 裕子
    九州大学大学院比較社会文化学府生物多様性講座

書誌事項

タイトル別名
  • Carbon and nitrogen stable isotope analysis using human bones and hair from Philippine burial sites

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抄録

フィリピンにおける古代人の食性を調べるため、それぞれ異なった地理的位置・環境条件・生業戦略をもつ5箇所の遺跡から出土した61個体の炭素・窒素安定同位体比(O13C and OI5N) を分析した。Batanes諸島はLuzon島北端から約200km、台湾から150kmに位置し、いわゆる船型埋葬と聾棺埋葬(355±70B.P.) が知られている。21個体の人骨コラーゲン分析の結果、δ13C値は16.6±1.3‰、δ15C値は9. 8±1.7‰で、食料中の蛋白源がやや海洋生態系に依存していることを示した。同位体比は埋葬形式で異なり、船型埋葬と聾棺埋葬の人骨のδI3C・δ15Nはともに土坑墓のものよりも高かった。一方、Luzon島北部に位置するLal-lo貝塚遺跡群(1000 BP)から出土した11個体では、δ13C値が-19±1.2‰、δ15N値が9.7±1.6‰で、より陸上生態系に依存すること示し、貝塚を構成する淡水員が陸上生態系に属する値をもつことと整合的であった。北西Luzon島のBenguet山地にあるKabayan遺跡、は13世紀のミイラを産出する遺跡で、3体のミイラの毛髪はδ13C値が-17±1.0‰、δ15N値が8.0±1.0‰で、陸上と内水面生態系の両者を利用していたことを示唆した。マニラ郊外のSantaAna遺跡(about1095 AD) の8個体では、δ13C値が-15.2±3.3‰、δ15N値が10.4±0.7‰で、5つの遺跡中、最も海洋生態系に依存していた。フィリピン中央部のRomblon島遺跡(13th-14th centuries)の18体の骨コラーゲンはδ13C値が-17.4±2.3‰、δ15N値が10.1±1.1‰で陸上と内水面生態系の両者を利用していたことを示唆した。またこれらの5遺跡において、δ13C・δ15N値の性差はいずれもみとめられなかった。

収録刊行物

  • 比較社会文化

    比較社会文化 16 25-43, 2010-03-20

    九州大学大学院比較社会文化学府

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