家畜市場における談合による価格形成の実態と改善方向 : 韓国全羅北道の任実家畜市場と淳昌家畜市場との比較分析

書誌事項

タイトル別名
  • Price Formation by the Collusive Agreement in Livestock Markets and Its Remedy Measure : A Comparative Analysts of Imsill and Soonchang Livestock Markets, Located in Chonbug Province, Korea
  • カチク シジョウ ニ オケル ダンゴウ ニ ヨル カカク ケイセイ ノ ジッタ

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抄録

韓国家畜市場において,問題になるのは売手市場でなく,買手市場である.売手市場にも競争を制限する要因がないわけではないが,買手市場における買手による談合が特に問題になって養畜農家の非難を浴びている.そのため,家畜市場における競争促進政策が要請されている.本論文では,以上のような認識に基づき,韓国の全羅北道の任実家畜市場と淳昌家畜市場を中心にして,買手側の市場構造,市場行動,市場成果を比較分析した.資料は1984年8月に行われた実態・アンケート調査資料と家畜売買証明書等である.分析結果は以下のように要約できる.(1)任実家畜市場においては,肉牛出荷者と仲介人,仲介人と食肉問屋,食肉小売業者の間に暗黙の特約関係がむすばれている閉鎖的流通体系である.それに対して,淳昌家畜市場は開放市場体系である.(2)上位10%と20%の買手・買参入による購入額が市場全体の購入額に占める比率をみると,任実家畜市場はそれぞれ33%と49%で,淳昌家畜市場は20%と36%である.上位4買手・買参入の集中度の変動状況をみると,任実家畜市場は,緩やかではあるが,高くなりつつあり,淳昌家畜市場は1983年の相対取引からセリ取引への移行を境として急激に低下している.(3)任実家畜市場の参入障壁は高く,淳昌家畜市場は任実家畜市場に比べて相対的に低い.すなわち,1984年2月から8月までの参入率を業種別にみると,食肉小売業者は任実市場が28%,淳昌市場が54%で,食肉問屋は任実市場が0%,淳昌市場が50%である.(4)任実家畜市場の競争の本質は談合による価格形成が行われていることであり,淳昌家畜市場は1983年8月セリ取引市場に変ってから競争が強まり,純粋競争状態に近づいている.(5)談合による価格形成の実態として,任実家畜市場の肉牛価格が食肉問屋(大手4買手)によって決められている.すなわち,食肉問屋がいくつかのセリ取引家畜市場の取引価格を基準にしながら,任実家畜市場への入場頭数と購入予定頭数を参考にして,生体1kg当たり標準価格を決めている.また,談合の一つとして部分購入(part purchase)の方法もとられている.(6)任実家畜市場の肉牛(雄牛)生体1kg当たり価格が淳昌家畜市場のそれより低い.すなわち,市場開設日によって差はあるが,1982年10月の場合は19ウォンから21ウォンの開きがあり,1983年10月は31ウォンから47ウォンの開きがある.両家畜市場の肉牛の品質差はないとみられるから,両市場の価格差は任実家畜市場の価格が談合によって低く決められたことによるものと考えられる.以上の分析から,相対取引市場における談合によって形成された価格が,セリ取引市場で形成された価格よりも不当に低い水準にあることが立証された.したがって,韓国の家畜市場は旧来の相対市場よりセリ市場へ早急に転換されることが望ましい.

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