野棲ハツカネズミの生活史 XII : 配偶子形成と初期発生

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書誌事項

タイトル別名
  • The life history of the Japanese mouse, Mus molossinus Temminck and Schlegel XII : Gametogenesis and early development
  • 野棲ハツカネズミの生活史-12-配偶子形成と初期発生
  • ノセイハツカネズミ ノ セイカツシ 12 ハイグウシ ケイセイ ト ショキ ハッセイ

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説明

著者はすでに野棲ハツカネズミの生活史I-XIを発表したが,ここにこの一連の研究の最後としてこの報告を行なつた.この研究において,著者が研究室内で繁殖飼育した日本産野棲ハツカネズミMus molossinusの配偶子発生と胚の初期発生とを観察した結果はつぎのようである.出生時における卵原細胞は肥糸期に達している.出生後5日目における卵母細胞は卵原細胞の約3~4倍の大きさになり,うすい1層の卵胞細胞をもつている.出生後5~10日目に卵は著しく増大し,生後10日目の卵は5日目のものの2倍の大きさになる.生後20日目に若干の卵胞にはじめて卵胞腔がみられる.生後50~60日目頃には成熟卵がみられ,まもなく排卵されるようになる.出生時の精細管には原始生殖細胞とやがて精原細胞になる小さな細胞が認められる.生後5~10日目には原始生殖細胞は全部消失してしまう.生後10~15日目に精細管壁には肥糸期にある数層の第1精母細胞があらわれる.生後10~15日目のあるものでは精細管に腔所ができ,この頃より造精作用は盛んになり,第1成熟分裂が起こる.生後15~20日目のいくつかの精細管には第2精母細胞がみられ,これは第1精母細胞の大きさの約半分の大きさを示している.生後20日目にはいくらかの精細胞が精細管腔の中心部に近くみられる.精細胞はさらに小さくなり,形は長くのびる.生後25日目には変態の進んだ精細胞がみられ,25~30日目にはこれが多数みられる.生後30~35日日には尾をもつ若い精子が現われ,それらの尖体はセルトリ細胞に接している.生後40~45日目には成熟した精子が精細管腔にみられ,生後45~50日目になると多数の成熟精子が現われる.交尾後24時間内では受精卵は1細胞期にある.2細胞期は交尾後24~38時間内,3~4細胞期は38~48時間内,5~8細胞期は48~64時間内,桑実胚期は68~80時間内,胚盤胞初期は72~82時間内にみられる.1~8細胞期までの大部分は卵管内に,桑実胚と胚盤胞は子宮内にみられる.桑実胚の中には偏心的な腔が現われる.子宮内に入つた胚は間もなく反子宮間膜側の粘膜のひだの間に反胚側を子宮上皮の方に向けて位置するようになる.交尾後96時間にして胚の反胚側および胚側の栄養膜から巨大細胞が生ずる.胚盤胞腔の増大につづいて内部細胞塊も成長する.胚盤胞は卵黄腔と内部細胞塊をもつ卵筒となる.外胚葉は2つの部分にわかれ,胚外外胚葉と胚体外胚葉とよりなる.胚盤胞に接し,胚体外胚葉をとりまく1層の細胞が内胚葉である.交尾後5日目では原羊膜腔が胚体外胚葉の中にできる.胚外外胚葉の背端における著しい成長によつて担胚円錐体が生ずる.交尾後6日目に中胚葉がみられ胚外外胚葉と胚体外胚葉が接する面に中胚葉が遊離する.

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