殺虫性芽胞細菌Bacillus thuringiensisのテンペレートファージに関する研究 : (1)ファージの誘発

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  • 岩花 秀典
    九州大学農学部生物的防除研究施設天敵微生物学部門

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タイトル別名
  • Studies on the Temperate Phage of Bacillus thuringiensis : (1)Induction of Phage
  • サッチュウセイ ガホウ サイキン Bacillus thuringiensis

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抄録

テンペレートファージの利用による殺虫性芽胞細菌Bacillus thuringiensisの微生物育種を目的とし, B.t. var. dendrolimus T84A1株からテンペレートファージを分離した.このファージは芽胞細菌の産生するテンペレートファージとしては独特な誘発現象を示すことが明らかになった. Ⅰ.Bacillus thuringiensisの溶原菌の検索 1)多数のB.t.菌株を用いて溶原菌の検索を行った結果,var. dendrolimus T84A1株が溶原菌であることを見出した. 2)T84A1株と他のB.t.菌株との混合培養によってファージが誘発された. II.Bacillus thuringiensisの混合培養によるファージの誘発 1)T84A1株×S-16株,T84A1株×RS-16株(A1,A2,A3ファージ耐性),T84A1株×A3-C1株,T84A1株×BSA株,T84A1株×BSK株の組合せで混合培養したときファージが誘発された.2)T84A1株およびS-16株のそれぞれの培養濾液にはファージ誘発因子は含まれていなかった.3)混合培養によるファージ誘発に必要な条件は,対数増殖期初期にある菌体を用い1mlあたり10^5個以上のT84A1株と10^4個以上のS-16株を混合し, 28℃15時間以上培養することであった.4)混合培養によるファージ誘発はT84A1株をアクリジンオレンジ処理することにより阻止されるが,S-16株を同様に処理しても阻害されなかった.5)T84A1株とS-16株との混合培養後の経過にともなって3つの異なるプラーク(透明:A1,不透明:A2,ハロー型:A3)があらわれた.6)3種のファージ(A1,A2,A3)の指示菌にはS-16株とA3-C1株がなることができたが, T84A1株はなりえなかった.7)A2ファージのS-16株におけるプラークは不透明であり,溶菌斑の中から分離されたB.t.は3種ファージに耐性であり,紫外線照射によってA2ファージが誘発される.この菌株はA2ファージによって溶原化された〔S-16(A2)〕であると考えられた.8)T84A1株と〔S-16(A2)〕株とを混合培養してもファージは誘発されなかった.

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