インド、アルナチャル・プラデシュ州のモンパ民族地域における住民にとっての「山」のもつ意味

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  • 水野 一晴
    京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

書誌事項

タイトル別名
  • The Role of the "Mountain" for Monpa People in Arunachal Puradesh, India

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抄録

インドのアルナチャル・プラデシュ州のモンパ民族地域において, 住民にとって「山」がどのような存在となっているのかを調査した. その結果, 山は, モンパ民族地域において次の3つの役割を果たしていることが判明した. 1.山は民族分布や文化, 社会の境界をつくっている. アルナチャルヒマラヤ(アッサムヒマラヤ)の山脈が流通の障害物の役割を果たし, タワンモンパとディランモンパでそれぞれ独自の言語や生活習慣が発達し, 両者の境界をつくっている. また, 山は1962年の中国軍のモンパ地域への侵攻以来, インド軍が大規模に駐留して, 自然の要塞の役割を果たしている. 2.モンパ民族が古くから信仰するボン(ポン)教の宗教的儀礼, 祭式において, 山が神として信仰の対象になっている. 各地域はそれぞれ周辺に山の神が存在し, その神に祈り, 捧げ物をする儀式, 祭りが行われている. 捧げ物は少女や家畜であり, それぞれの山の神に捧げるものが決まっている. ディランモンパ地域のディランゾン地区やテンバン地区では, 社会的階層としての上位クランと下位クランに分かれており, このような伝統的儀礼にはそのクラン(氏族)の差が明瞭に見て取れる. 3.山はモンパ民族にとって資源として重要であり, 住民は山の森林から材を得てきた. ディラン地方では森林は3つに区分され, それぞれの使用目的も異なる. しかし, 近年大量伐採によって森林破壊が顕著になり, そのため, 商業伐採が禁じられたが, 今でも違法伐採が続いている. 住民たちもそのような森林の過度の伐採に危機感を感じるようになってきたため, 伐採に代わるような現金獲得手段を考え, 森林保護を進める動きが出てきた.

収録刊行物

  • ヒマラヤ学誌

    ヒマラヤ学誌 13 142-153, 2012-05-01

    京都大学ヒマラヤ研究会・京都大学ブータン友好プログラム・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390009224839983872
  • NII論文ID
    120005466217
  • NII書誌ID
    AN10392447
  • DOI
    10.14989/hsm.13.142
  • HANDLE
    2433/186119
  • ISSN
    09148620
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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