精霊憑依のコミュニティ--北タイ,チェンマイの基柱の守護精霊を崇拝する霊媒集団とその宗教実践

書誌事項

タイトル別名
  • The community of spirit possession: religious practices of a grouping of spirit mediums that worships the tutelary spirit of city pillar in Chiang Mai, northern Thailand
  • セイレイ ヒョウイ ノ コミュニティ キタタイ チェンマイ ノ キ チュウ ノ シュゴ セイレイ オ スウハイ スル レイバイ シュウダン ト ソノ シュウキョウ ジッセン

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説明

一般に,民衆の文化実践には,現代世界の生権力に支配されない,固有の時聞や空間をつくり出す能力がある。北タイ,チェンマイの霊媒集団による宗教実践はその典型である。彼らは,20世紀初頭まで独立王朝を擁した古都チェンマイにおける「都市の基柱」の守護精霊に纏わる数々の年中行事を主催している。霊媒たちのなかには,地縁・血縁に基づく伝統的な共同体の守護精霊に憑依される者が多い。彼らは,「基柱」の守護精霊の崇拝儀礼を主軸に据えながら,自身の守護精霊祭祀に積極的に関わっている。これらの伝統的な共同体の精霊祭祀には,成員以外の霊媒たちを招待する場合が少なからずある。実際,チェンマイとその周辺地域では伝統的な守護精霊だけでなく,多種多様な憑依精霊を有する霊媒たちが,入れ替わり立ち替わり,精霊憑依礼,「ヨック・クー」を組織し,霊媒たちのコミュニティを形成する。そこには儀礼ネットワークが存在するのである。さらに彼らには,新たな儀礼を創造する能力がある。北タイの歴史上最も重要な3人の王に因んだチェンマイ最大規模の精霊憑依儀礼がその証左である。この背景には,精霊崇拝がチェンマイ固有の文化であり,霊媒はその担い手であるという,霊媒たちの自負が存在する。総じて霊媒たちは,チェンマイの多種多様な精霊崇拝の担い手であり,その宗教実践は,民衆文化の自律性を如実に示している。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 98 229-267, 2009-12-30

    京都大學人文科學研究所

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