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- 手嶋 英貴
- 京都文教大学総合社会学部教授・京都大学人文科学研究所非常勤講師
書誌事項
- タイトル別名
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- A Study of the Keralan High-Class Priests "Tantris" Their Duties and Relation to the Vedic Tradition
- ケーララシュウ ノ ヒンドゥー ジイン シサイ ・ タントリ : ソノ ショクム ト カケイ,ヴェーダ デンショウ ト ノ カカワリ
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抄録
本稿では, ケーララ州のヒンドゥー教が持つ諸特徴のうち, とくに「タントリ」と呼ばれる高位の司祭を取りあげる。ケーララ州の寺院儀礼, とりわけ各種の大祭を執行するためにはタントリの参画が不可欠とされている。その存在はケーララ独自の宗教文化を形成する重要なファクターの一つといってよいが, これに焦点を当てた研究は今までほとんど公にされていない。第1 章では, 寺院組織の概要を示し, その活動全体において担うタントリの職務, およびそれをめぐる社会環境の変化を述べる。第2 章ではタントリの家系と, 彼らが依って立つ儀礼伝承の在り方を紹介する。その上で第3章では, 有力なタントリの一つであるタラナネルール家(Tarananellur mana)の事例を見ていく。同家は, ケーララ州で最も格式の高いタントリとして知られる一方で, ヴェーダ伝承の師匠家という側面も持っている。ヴェーダとタントラという, ケーララに固有の二つの宗教伝統において, ともに高い地位を占めている珍しいケースであるといえる。あらかじめ, 事例の理解に必要な範囲でヴェーダ伝承家系の概要を述べ, その上でタラナネルール家が二つの宗教的地位を兼ね備えることになった経緯を明らかにしていく。これらの検討を経て, 最終的には以下の見解を提示する。ヴェーダ伝承上の職権やステータスはナンブーディリ社会における重要なファクターである。しかし, タントラの職権・ステータスは, 原則としてそれに左右されない点が注目される。ヴェーダを尺度とする社会的な位置づけは, 一度それが確定すると, 当事者にとって不本意なものであっても容易に変えることは出来ない。しかし寺院のタントリは, ナンブーディリの間でも名誉ある職として認知されており, かつそれを得る可能性はどのナンブーディリに対しても開かれている。つまり, ナンブーディリ社会では, ヴェーダを軸とする硬直的な階層システムとは別に, より柔軟で可動的な階層システムがタントラの領域で担保されていると見ることもできよう。
収録刊行物
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- 人文學報
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人文學報 110 121-147, 2017-07-31
京都大學人文科學研究所
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390009224844764416
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- NII論文ID
- 120006466638
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- NII書誌ID
- AN00122934
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- DOI
- 10.14989/231123
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- HANDLE
- 2433/231123
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- NDL書誌ID
- 028492348
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- ISSN
- 04490274
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可