<論説>ヴァーチュオーソと科学

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タイトル別名
  • <Articles>Virtuosi and Their Sciences
  • ヴァーチュオーソと科学
  • ヴァーチュオーソ ト カガク

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抄録

十七世紀後半から十八世紀初めにかけて、英国の科学者達は、ヴァーチュオーソと呼ばれ、自らもそうなのった。しかし、このことばは単なる「科学者」の意をこえて、さまざまのニュアンスを含む。その一つが、ヴァーチュオーソはジェントルマンと半ば同義である点である。ジェントルマン理念の主体たる貴族・上層ジェントリーと科学との関係は、絶対王政期の宮廷に開始する。そこで科学は、宮廷人の「体裁」として、初めてその教養の一つに数えられる。一方、地方ジェントリーの地方閑居は、宮廷的科学を継承して、科学への別の姿勢を産む。それが、娯楽・慰安としての科学の受容である。この二つの態度(とりわけ後者) が規定する、自己収束的で寡黙な科学の性格を、本稿ではヴァーチュオーソの科学と呼ぶ。ヴァーチュオーソの科学は、同時期に誕生したもう一つの理念、多産的で、協働による進歩を期するベイコニアニズムと、本来異質で、相容れるものではない。にもかかわらず両者の影響関係は否定できない。王政復古期の科学の二元性、ヴァーチュオーソという名辞の多義化はそうした異質のものの融合に起因している。

収録刊行物

  • 史林

    史林 61 (1), 70-102, 1978-01-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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