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- 徐 朝龍
- 茨城大学教養部講師
書誌事項
- タイトル別名
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- <Articles>The Indus Enigma : Contradiction and Key Evidence
- インダス文明起源の問題--矛盾とその源
- インダス ブンメイ キゲン ノ モンダイ ムジュン ト ソノ ミナモト
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説明
本稿は、インダス流域先史時代研究における最大の課題である Harappa 文化の起源問題をめぐり、これまでの「先 Harappa 文化説」と「初期 Harappa 文化説」とが抱えている最も根本的な矛盾を指摘し、それらの矛盾の源を解明することを目的とする。両説は「先 Harappa 文化」(または「初期 Harappa 文化」) と盛期 Harappa 文化との系譜関係を議論するにあたって、両者の土器が明確に異質であるにもかかわらずこれを結び付け、ないしはその異質性を過小評価し、無視した上で成り立っている。この傾向は二つの要因による。一つは、発掘を経た一部の遺跡で確認された両文化の層位的上下関係を文化継承関係においても、「先」または「初期」を主張する根拠としていること。もう一つは、盛期 Harappa 文化を産んだ先行文化が未だ発見されていないにもかかわらず学説の成立を性急に求めてきたことである。しかし、筆者によれば、両文化が重なりあう遺跡の層位状況を細かく検討すると、両文化の問には明確な断絶が認められるのであって、従来の学説が成り立つための最大の根拠である、時代の前後関係をもって、文化の系譜を考定することはできないのである。一方、この成果に立つと、いわゆる「先 Harappa 文化(または「初期 Harappa 文化」) は、土器の異質さに代表されるように、上に重なる盛期 Harapp 文化とはそもそも異質な文化であることも明快に説明できる。そして後者は自らの先行文化を Moenjo-Daro の下層部にもっているということは筆者が先に明らかにしたとおりである。両者が一部の遺跡で重なりあうのは全盛期を迎えた Harappa 文化の拡張の結果に過ぎない。これら基本的な根拠から、インダス流域では第三千年紀にわたって「Kot Diji 文化」と「Harappa 文化」という二つの異なる文化が併存し、前後して繁栄したという新しい見方が最も合理的な理論として確固たる地位を得るであろう。
収録刊行物
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- 史林
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史林 74 (3), 403-436, 1991-05-01
史学研究会 (京都大学文学部内)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390009224846312064
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- NII論文ID
- 120006597689
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- NII書誌ID
- AN00119179
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- HANDLE
- 2433/239130
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- NDL書誌ID
- 3410793
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- ISSN
- 03869369
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可