<論説>平安初期の官人と律令政治の変質

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タイトル別名
  • <Articles>Offcials and the Degeneration of Ritsuryo 律令 Government at the Beginning of the Heian 平安 Era
  • 平安初期の官人と律令政治の変質
  • ヘイアン ショキ ノ カンジン ト リツリョウ セイジ ノ ヘンシツ

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抄録

公民の分解もすすみ、律令的な土地制度も負担体系も根本的に動揺していたにも拘らず、とにかく九世紀を通じて、まがりなりにも律令政治が展開しえたことは事実である。それが基本的には律令的支配階級にとってかわるべき階級的勢力の未熟さによっていたこともまた周知のことである。だが直接政治の局面について考えると、それは当時、国家によって "良吏" として把握された官人-とくに国司-逹を分析することによって理解できるようである。彼ら "良吏" はまぎれもない律令官人でありながら、従来にはみられない現実性をもっている。本稿ではそれを論証するために、六国史の史料性を検討することからはじめ、その登場の要因等を考察し、その歴史的性格にまで論及したつもりである。本稿でその分析の中核として、わざわざ数的には例外とも考えられそうな "良吏" に注目したのは、従来のように彼らを例外としてのみ理解することによっては、この律令政治の多様な可能性を含む崩壊過程を正しく把握できないと考えたからに外ならない。 まだ九世紀には "良吏" のもとで公民の大多数が基本的には国家に対抗するよりも依存する動きを示さざるをえなかったことが、この政治の一応の成功の原因であったし、それが次に律令国家を変形させた古代国家としての摂関政治体制の出現を保障する一つの前提的役割を果したと考えられるのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 47 (5), 631-665, 1964-09-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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