<論説>九・十世紀の「文人官僚」--「文人派」再考--

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>Scholar Bureaucrats (Bunjin kanryō) in 9th and 10th-century Japan: A Reconsideration of the Scholars' Faction (Bunjin ha)
  • 九・十世紀の「文人官僚」 : 「文人派」再考
  • キュウ ・ ジッセイキ ノ 「 ブンジン カンリョウ 」 : 「 ブンジンハ 」 サイコウ

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抄録

平安時代においては、京内の学習施設「大学」で学識を身につけ、官人として朝廷に仕えた人々が多数存在していた。通説的には、彼らは人材主義的・反貴族的な存在とされ、世襲的な貴族層との対立や自身の質的変容により、九世紀中には姿を消していったと考えられている。しかし、そうした所説には疑うべき点が少なくない。本稿では、彼らを「文人官僚」として定義し、官歴・政治的行動の面から網羅的に検討することで、九・十世紀の官人社会における基礎的な性質を確認し、併せて従来の理解について再検討を行った。その結果、九・十世紀において文人官僚に顕著な没落や変質の形跡は見出せず、彼らが反貴族的な行動を取った形跡も何ら見出せないことが判明した。文人官僚は、その学識による能力と、学問を通じて権力者との人格的関係を構築しやすい点にその特徴を求められるのであり、むしろ親貴族的な存在として理解すべきなのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 103 (4), 457-492, 2020-07-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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