日本語学習者の一,二人称および三人称談話における指示表現の選択

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  • JFL Learners' Referential-Form Choice in First-through Third-PersonNarratives

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説明

本研究では、英語を母語とする日本語学習者の口頭談話において主語位置の指示表現(名詞句、代名詞、ゼロ代名詞)がどう選択されるのかを調査した。与えられたストーリーを再現するタスクとロールプレーにより、一人称から三人称の独話資料を初級、中級、上級計36名の学習者と15名の日本語母語話者から収集し分析した。その結果、学習者の談話は、一、二人称指示では省略される主題主語の割合が高く母語話者の水準に近かったのに対して、三人称指示では母語話者の場合に比べ省略の割合が低くなり明示的な指示表現を多用する傾向がみられた。本稿では、このバリエーションは指示表現の言語的機能(一、二人称かあるいは三人称か)および談話環境(文脈性が高いか否か)の違いによって生じたという仮説を提示する。日本語習得研究に限らず、第二言語習得研究一般に対する示唆として、学習者の談話における指示のシステムは、先行研究で議論されてきたように指示表現を余剰に使用する段階からゼロ代名詞を使用する段階へすすむ、あるいはその反対の発達経路をたどるといった一方的な発達をするのではなく、選択される指示表現の言語的機能および談話環境に条件づけられた有機的な発達を遂げる可能性のあることを提唱する。

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