帝国日本と国籍--帝国解体後の国籍問題

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タイトル別名
  • The empire of Japan and nationality: nationality after the fall of the empire
  • テイコク ニホン ト コクセキ テイコク カイタイ ゴ ノ コクセキ モンダイ

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説明

日本は,海外植民地を獲得してから,戸籍制度を整え,植民地の人々に日本国籍を与えた。しかし,内地と外地を区別する戸籍制度は差別的なものであり,国籍を与えることにより日本の支配地域の人々の統合を促進するのに役立ったという状況にはほど遠いものであった。 太平洋戦争敗北後,日本は植民地を失うが,旧植民地出身の人々の国籍問題に関して法的整備はなされなかった。そのため,旧植民地の国籍に関して戦後の法廷で争われることも少なくなかった。特に,旧植民地出身者と婚姻した生来の日本人が,戦後に日本国籍を剝奪されたことを不当として訴えを提起したことが,社会の注目を集めた。 最高裁判所は戦前の戸籍制度を重視して,婚姻により外地籍に入ることにより日本国籍は失われたとの判断を示し,原告の訴えを退けた。封建的な家制度に基づく戸籍制度は,民主化された憲法を持つ戦後の社会にまで影響力を及ぼし,最高裁判所は法的な論理を形式的に適用して国籍の剝奪を正当化したものと考えられる。植民地を切り離した戦後の日本は,生来の植民地出身者のみならず,一度植民地の戸籍に入った生来の日本人をも日本国籍から切り離したのであった。

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