ポストモダニズムにおけるアフリカ系アメリカ人--スーザン-ロリ・パークスの『トップドッグ/アンダードッグ』の考察

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タイトル別名
  • Black figures in postmodernism: Suzan-Lori Parks's Topdog/Underdog
  • ポストモダニズム ニ オケル アフリカケイ アメリカジン スーザン ロリ パークス ノ トップドッグ アンダードッグ ノ コウサツ

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抄録

2002年ピューリッツァー賞に輝いたスーザン-ロリ・パークス(Suzan-Lori Parks 1964-)の『トップドッグ・アンダードッグ』(Topdog/Underdog, 2001)は,シニカルにアメリカ社会の人種問題を解き明かそうとする風刺劇である。一般的に黒人演劇は60年代のバラカ,ハンズベリーなどに見られるように,アメリカにおける白人中心主義を黒人側から抗議するプロテスト劇が中心を占める。パークスの作品は,第二世代のプロテスト劇と考えられ,白人中心のアメリカにおけるアフリカ系アメリカ人のアイデンティティの問題を描きつつも,直接的な抗議ではなく,黒人の現状が白人社会の枠組みに必然的に組み込まれざるを得ない救い難い皮肉を伝えるものである。彼女の作品には,アフリカから連行され,家族と離散し,中間航路や奴隷制によって分断されたアフリカ系アメリカ人の歴史が登場するが,こうした過去は嘆き,抗議するべき対象ではなく,むしろ固定したイメージである。形骸化こそしているが,それでも登場人物たちは過去のイメージを完全に払拭することもできずに,ポストモダン,ポスト人種主義と言われる複雑な社会の中でアフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティを模索している。本稿では現代のアフリカ系アメリカ人が白人中心のポストモダン経済システムの中で,自らのアイデンティティをどのように定義づけているのかを,『トップドッグ』に登場する白塗りのリンカーンという象徴から分析する。

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