素・漱石(1)幼少期に潜む真実

書誌事項

タイトル別名
  • A Study of Soseki Natsume(1) : The Truth Hidden in His Childhood
  • ス ソウセキ 1 ヨウショウキ ニ ヒソム シンジツ

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説明

本論は作家夏目漱石の幼少期について、彼自身の生い立ちに関わる当時の時代状況や教育内容、及び書き残されている作文等を手がかりに考察したものである。それらの分析からは、まず、生後すぐに里子に出され、後に再び別の家へと養子に出された漱石の、家族や家庭に恵まれず、内面的には決して満たされぬままに成長した、当時の心の風景が表れる。けれども、彼は、自らのその環境を、明治の儒教的訓育の中で培われた信念に基づいて受け止めて、無心に「鉄心」を求め「正心」を希求する。すなわち、内なる心の叫びを押し固め、対外的には逞しき意志として示して行く。それは、幼き日の漱石の、いわば心的二重構造であり、後に西洋心理学を受容して、独自の「意識」世界を展開する原動力となる、漱石作品全体を貫く「意識」の礎となる部分と言えるだろう。

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