世界史未履修問題と岩手大学生 : アンケート調査結果によりながら

書誌事項

タイトル別名
  • The So-called Sekaishi-mirishu Problem (The problem that many Japanese senior high school students do not virtually learn a required subject‘, World History’) and Students of Iwate University : Findings of the survey
  • セカイシ ミリシュウ モンダイ ト イワテ ダイガクセイ アンケート チョウサ ケッカ ニ ヨリ ナガラ

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抄録

小論は、さる2006年11 月岩手大学生に対し実施した世界史未履修問題に関するアンケート調査の結果報告である。周知のように、同年10月末、全国の高校で世界史をはじめとする必修諸科目の履修漏れが発覚し、大きな社会問題となった。こうした事態を受け、本学で外国史(西洋史)教育に携わる筆者が、おもに学生たちの未履修状況を確認する目的で行ったのが、このアンケートである。  調査は2回にわたり行われた。まず1回目は、西洋史関係の授業を受講する比較的少人数の学生15 名(所属学部は、教育学部3名、人文社会科学部6名、農学部5名、工学部1名)を対象とし、2回目は、歴史とは無関係のある授業(教員免許関連科目)を受講する比較的大人数17 2名(所属学部は、教育学部85 名、人文社会科学部51 名、農学部15 名、工学部21名)を対象とした。両者あわせて187 名となる(両者に重複する学生は確認されない)。質問内容は1回目と2回目とで若干異なるが、①高校で世界史を履修したかどうか、②履修漏れの問題をどう考えるか、③世界史が高校の必修科目であることについてどう思うか、の3つを中心とする点で変わりはない。回答は全員から得ることができた。  ところで、筆者はもともとこのアンケートをもっぱら個人的な参考にするため行ったのであり、結果を公表する意図は持ち合わせていなかった。対象者の種類や人数、質問項目等も、それゆえ科学的分析に適するよう、十分考慮のうえ設定したわけではなかった。もし未履修学生の全体状況を正確に把握しようとするならば、いま少し対象人数を増やし(とりわけ理系学生について)、また設問もきちんと整える必要があっただろう。筆者がこれまで久しく結果報告を怠ってきたわけは、まさにこうした事情による。にもかかわらず今回、調査実施から4年あまりを経たのち、このように小論を執筆することとなったのは、未履修問題が一見したところすでに過去の出来事となり、われわれの記憶から遠ざかりつつある現在、このアンケートは記録としての価値をもち始めたと考えるからにほかならない。当時の岩手大学生の未履修状況について、たとえ統計データとして多々欠陥はあるにせよ、これはやはり唯一の資料にちがいない。またここに寄せられた学生たちの声は、未履修が横行した時期に高校教育を受けた当事者たちの、生きた証言であり率直な意見である。全国的に見ても、同種の調査は稀少なようである。管見の限りでは、西岡尚也氏による琉球大学生に対するものが知られるのみである(西岡「高校世界史未履修問題にみる社会科教育の課題――大学生へのアンケートを中心に――」『琉球大学教育学部紀要』72集,2008年:同改稿版『琉球大学教育学部社会科論集:高嶋伸欣教授退職記念』2008年。なお、このアンケートは07年4月に実施され、同年度の新入生、つまり前年の騒動に巻き込まれた当時の受験生たちをおもな対象者としている)。今となっては貴重と思われるこの資料を、一つの情報として開示し、あらためて世界史未履修問題とは何だったのか、また世界史教育のあり方はどうあるべきかを考える材料としたい。これが、ここに遅ればせの報告を記す目的である。  以下ではアンケート結果に基づきつつ、まずは岩手大学生の未履修の実態を示し、ついで未履修問題および世界史必修に対する彼らの意見をまとめていきたいと思う。

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