『十二門論』に見る主宰神否定論 : 苦の由来をめぐって

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タイトル別名
  • On Atheism in The Twelve Gate Treatise
  • ジュウニモンロン 二 ミル シュサイシン ヒテイロン : ク ノ ユライ オ メグッテ
  • ジュウニモンロン ニ ミル シュサイシン ヒテイロン ク ノ ユライ オ メグッテ

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抄録

苦は何に由来するのだろうか。自身によるのか、他によるのか、自と他の両者によるのか、あるいは無因なのか。『十二門論』の著者は、これら4つの選言肢を否定することで、苦の存在そのものを否定する。ここでいう「自身」とは、苦それ自身あるいは個我(プドガラ=アートマン)であり、「他」とは、前生における個我あるいは主宰神(自在天)を指す。このうちの特に主宰神の否定が、第10 章「〔苦の〕作者の考察」の主題である。この『十二門論』は、かつては、『中論』によって空の哲学(空観)を確立したナーガールジュナ(龍樹、150-250 年頃)に帰せられていたが、筆者は、ナーガールジュナの哲学に基づいておそらく4 世紀頃に書かれたものと考えている。この頃、インドにおいては有神論が発展し、とりわけ論理学をその体系の中核に置くニヤーヤ学派はその理論体系に有神論を導入していた。創造神は、どこに身を置いて、どのように、この世界をつくったのか。身体を持っているのか。創造に際して材料や道具はもちいたのか。人間の運命を支配しているのか。無神論者によって提起されるこれらの論難は素朴なものではあるが、後世の有神論者と無神論者との間で戦わされた熾烈な論争へとつながっていく。

収録刊行物

  • 基督教研究

    基督教研究 64 (1), 46-72, 2002-07-29

    基督教研究会

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