酸性コラーゲン及び酸性ゼラチンの生物学的特性 : 細胞増殖及び架橋度の影響について

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  • The biological properties of the alkali-treated collagen and gelatin : a preliminary study of their influence on cell growth when used as scaffolds

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コラーゲンやゼラチンのアルカリ抽出法は、従来の酸処理や酵素処理法に比べ幾つかの優れた利点を有する。一方で、その過程において等電点が酸性化する事が知られており、その生物学的な効果や影響については未だ十分に明らかになっていない。そこで本論文では、そのようなアルカリ処理コラーゲンやゼラチンの生物学的性質を調べるため、足場材料として用いた場合の細胞増殖に対する影響について予備的に検討を行った。さらにアルカリ処理コラーゲンやゼラチンに対する架橋修飾による影響、および反対の等電点をもつコラーゲンやゼラチンとの混合による影響等についても検討を行った。ペプシン処理コラーゲン、アルカリ処理コラーゲン、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンを、それぞれコーティングしたプレート上においてラット培養細胞を培養し、4日後その増殖の程度について評価を行った。結果、アルカリ処理コラーゲンやゼラチンにおいて、細胞増殖の低下が認められた。しかしながらUV架橋を行ったところ、その細胞増殖が回復することが認められた。また、ペプシン処理コラーゲンとアルカリ処理コラーゲンを混合した場合、少量を混合した場合は特に影響を認めなかったが、等量近く混合した場合においては、細胞増殖が極端に低化していた。一方酸処理ゼラチンとアルカリ処理ゼラチンを混合した場合においても、細胞増殖の低下は認められたが、その極端な低下は認められなかった。以上より、アルカリ処理コラーゲンやゼラチンを足場として用いた場合、細胞の増殖はむしろ低下していた。しかしながら、適度の架橋を加える、あるいは従来のアルカリ性の等電点を持つコラーゲンやゼラチンと適切な配合比において混合使用することにより、足場機能を損なわずに、そのアルカリ処理による利点を生かした有用な足場材料として使用できる可能性があると考えられた。

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