信仰と創作 : ミルトンの場合

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タイトル別名
  • シンコウ ト ソウサク ミルトン ノ バアイ

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抄録

序 : 芸術創作の活動ほど, 人間の自我を強くよび醒ますものはあるまい。古来いかに多くの聖母マリアの画像が, 特定の女性に寄せる画家達の慕情を生々しくあらわしていたことか。美は妄執の所産であるという意見の生まれるのも当然であるように思われる。中世以来, カトリックの修道院において, 修道士や修道女に課せられた三つの誓願がある。chastity「貞潔」, poverty「清貧」, obedience「従順」である。自我を押え, 生来の癖を矯める彼等にとって, 「従順」に徹するのが, 最も困難であると聞く。思えば, seven deadly sins「七つの罪源」の筆頭に置かれているのもpride「傲慢」である。すぐれた資質を長上の者から無視されて, 好ましくない仕事を押しつけられて働く修道士の苦悩は察して余りある。不当な扱いに抗議し反発することは, 自ら進んで守ることを誓った「従順」の誓願に反し, 自らに見出したキリスト者としての存在理由に矛盾するからである。……

収録刊行物

  • 人文研究

    人文研究 19 (7), 539-555, 1968

    大阪市立大学文学部

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