映画ポスターのキャッチフレーズの日中比較のためにー先行研究の批判的検討ー

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抄録

本稿の目的は、映画ポスターのキャッチフレーズを異なる言語間で対照するための枠組みを提案することにある。 そのために、これまでになされてきたキャッチフレーズの言語学的研究と語用論的研究を取り上げ、批判的に検討した。その結果、キャッチフレーズの言語学的研究は主に修辞や構文の観点から、語用論的研究の多くは認知言語学、談話分析、関連性理論の観点から分析されていることがわかった。また、映画のキャッチフレーズを取り上げた研究は極めて少ないことが確認された。先行研究の問題点として、ジャンルを同じくする商品の異なる言語によるキャッチフレーズの比較はなされているが、同じ商品に対する異なる言語のキャッチフレーズの対照分析はほとんどなされていな いことが指摘できる。これは、比較の等価性という点で問題があると言わざるをえない。また、データ収集は体系的な方法で行われているとは言えず、恣意性が認められる。先行研究に関するこのような検討結果を踏まえ、今後のキャッチフレーズの言語学的研究として、同一映画の異なる言語によるキャッチフレーズを対象に比較し、言語間の異同を分析する方向を提案した。具体的には、比較の等価性を確保するために、同じ英米映画の日本版ポスターのキャッチフレーズと中国版ポスターのキャッチフレーズを分析対象とする計画を提示した。また、体系的な比較が可能になるよう、映画のジャンル分け、年間映画興行収入ランキングトップテンといった観点からデー タを集める方法を提案した。このようにして、対応する映画ポスターのキャッチフレーズを対照分析することにより、対照されるそれぞれの言語における好まれる表現や内容を明らかにすることができると主張した。

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