芥川龍之介「三右衛門の罪」における近代的主体の揺らぎ(上) ―志賀直哉「范の犯罪」との比較を通して―

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  • アクタガワ リュウノスケ 「 サン ウエモン ノ ツミ 」 ニ オケル キンダイテキ シュタイ ノ ユラギ(ウエ)シガ ナオヤ 「 ハン ノ ハンザイ 」 ト ノ ヒカク オ トオシテ

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抄録

芥川龍之介の作品には、典拠を持つものが多くある。先行する作品を書き直し新たな作品を生み出すという芥川の創作手法は、「三右衛門の罪」(大正十三年)にも認められ、志賀直哉「范の犯罪」(大正二年)を下敷きとすることが指摘されている。しかし、「三右衛門の罪」は、単行本未収録という事情もあり、これまでの研究において取り上げられることが少なく「范の犯罪」との比較考察も十分には行われていない。本稿は、「三右衛門の罪」と、これに先行する「范の犯罪」との作品分析を行い、両作を比較するものである。その目的は、第一次世界大戦後の大きな時代の変革期にあって、諸相において〈近代〉を問い直していくこの期の芥川の文業の、具体的なありようを照らし出していくところにある。(上)では、「范の犯罪」の先行研究を踏まえつつ、倫理的存在であり、個の意志と行為を持つ范の意識の内部に、近代的主体の概念が認められることを論じた。〈下〉では、「三右衛門の罪」において、こうした近代主体概念が大きく変容していることを見ていく。

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