待遇表現の言語行動論的研究

説明

(1)社会言語学・言語行動研究の領域で敬語や待遇表現の調査研究を進めていると,一般の回答者が,狭義の敬語だけでなく,より幅広い範囲の敬意の表現を意識しているらしいことがしばしば観察される。 (2)たとえば,他人に何かを依頼する際に,依頼する理由や事情を言い添えるか,依頼する際の時間帯や媒体のことを断りとして言い添えるかなど,依頼表現全体の話の組み立て方という点に,敬語についてと同様の対人的な配慮が観察される。 (3)面接調査の質問や回答結果によって検討すると,そのような表現を言い添えることが表現の丁寧さや相手への配慮を支えるという意識の存在することが,成人だけでなく高校生という若年層にも指摘できる。また,敬語形式の使い方から見て丁寧な表現には,こうした言い添えが現れやすいという関連も指摘できる。 (4)そのような表現の内容を検討すると,単に言語形式・言語表現としての敬語や待遇表現だけでない,言語行動としての待遇表現の広がりが見えてくる。 (5)こうした論点の広がりは,学校教育の場や国語審議会の議論の中にもすでに指摘される。この視点に立った敬語・待遇表現研究が,今後とも展開されるべきである。

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