協働と観賞―日中多人数インタラクションに見られる多様な均衡性―

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タイトル別名
  • Collaboration and Spectatorship : Diverse Equilibria in Sino-Japanese Multiparty Interaction

抄録

本稿は日中母語場面での多人数会話インタラクションにおける参与形態のあり方をマルチモーダルコミュニケーションの観点から明らかにすることを通じて,参与枠組みの汎用性の検証並びに枠組みの精緻化を目指すものである。具体的には,同じ職場で働く日本語母語話者グループ(JPG)と中国語母語話者グループ(CNG)の自然会話の質的な分析を通じて,多人数インタラクションでは,言語の異なりによって,均衡な参与形態の中で異なる選好傾向が見られること,特に性差が均衡性の異なりにかかわっている可能性を示す。 分析に用いたデータは日本語母語話者グループ(JPG)と中国語母語話者グループ(CNG) 3名の自然会話データである。動画解析ルーツELANを用いて分析をした結果は,JPGの場合,会話インタクラクションの受け手は,頻繁な相づち,共感表現やオーバーラップの使用,また頷きや笑いといった行為によって,話し手と受け手が協力的・動的にインタラクションを構築していく「協働型均衡」の参与形態を選好する傾向が見られた。一方,CNGは会話インタラクションの受け手は,話し手との発話行為や注視行動によって,話し手と受け手が親密な関係性を相互に・対等に深めていく「観賞型均衡」の参与形態を選好する傾向があることを明らかにした。以上の分析は,多人数インタラクションがいかに行われているかを示し,日中の職場で起こりうる多様な均衡性をより広く理解する端緒を提供する。

p.136の図8は、別添【正誤表】を参照ください。

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