床面の条件設定の違いがストレッチポールエクササイズの効果に及ぼす影響

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>ストレッチポール( 以下SP) は持ち運びの利便性から様々な場所で使用されている.一般的には床上で使用されていることが多いが, 理学療法士の指導下においてはベッド上で使用されることが多い( 西原ら,2017).SP を置く接地面の条件よりSP エクササイズの効果にも影響がみられると推測されるがエビデンスについては確立されていない.本研究の目的は床面の条件設定の違いがストレッチポールエクササイズ(以下B7)の効果にどのような影響を及ぼすのか,検証することとした.</p><p>【対象・方法】</p><p>対象は健常な男女90 名( 平均年齢21. 1± 8.9 歳) とし,SP を床面上(A 群),ストレッチマット上(B 群),ウレタンマット上(C 群) に置きB7 を行った.各群は無作為に30 名ずつ設定した.測定はB7 の施行前後で行った.柔軟性の測定はデジタル式長座体前屈計( 竹井機器工業製) を使用.体前屈を行い上肢指尖の移動距離を測定した.静的バランスの測定は重心バランスシステムJK101 II ( ユニメック社製) を使用.サンプリング周期50ms(20Hz) にて30秒間測定した.測定条件は,裸足にて上肢を自然下垂し,目線の高さに設定したマーカーを注視させた.解析項目は総軌跡長,X 方向軌跡長,Y 方向軌跡長とした.統計学的解析は,SPSSver.25 を使用し,Shapiro-Wilk 検定にて正規性を確認後,Kruskal-Wallis 検定を用いた.有意水準は5%とした.測定は級内相関係数(ICC) を確認し,更にB7実施後に使用経験についてアンケート調査を行った.</p><p>【結果】</p><p>長座体前屈は ICC(1,3)=0.91 ~ 0.96 ,重心バランスの測定はICC(1,3)=0.91であり,どちらも almost perfect の信頼性を認めた. 長座体前屈の前後差は,A 群1.6 ± 2.3cm,B 群3.2 ± 2.6cm,C 群4.83 ± 3.0cm であり,それぞれにおいてSP 使用前後に有意に高値を示した.また, 3 群比較においても,C 群,B 群,A 群の順で有意に高値を示した.静的バランスでは総軌跡長のC 群,X方向軌跡長のB 群,C 群においてSP 使用前後に優位に低値を示した.3 群比較の変化量においては,総軌跡長,X 方向軌跡長ともに有意に低値を示した.しかし,Y 方向軌跡長では,SP 使用前後,3 群比較において有意差を認めなかった.今回のアンケート結果では,SP 未経験者が71.1% であった.</p><p>【考察】</p><p>結果より,C 群,B 群,A 群の順でSP の効果が得られた.C 群の測定の際,SPがウレタンマットに深く沈み込み,A 群,B 群と比較してSP が安定していた. 従って,SP と床面の接地面積が広くなり,SP が固定され,より安定してB7 を行うことが可能になったと考える. 対象者の役7 割はSP の使用経験がなく,不慣れな対象者はエクササイズの動きにより不安定な状態になる( 岡本,2015). そのため,柔らかいウレタンマット上でSP を使用することによりC 群はSP が脊柱に沿って変形し,身体とSP の接触面積が増加したことで,安定した状態でB7 を行えたことが推測された.このことから, A 群,B 群と比較してC 群は脊柱周辺の筋群に均一に作用されやすくなり,筋の柔軟性と静的バランスが向上したと考えた. 今後はサンプル数拡大し,さらに検討する必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者にはヘルシンキ宣言に沿って研究の主旨及び目的を十分に説明し,書面にて同意を得た.本研究は研究協力施設の倫理審査員会の承認を得て実施した( 承認番号:31-008).なお,本研究において開示すべき利益相反関係にあたる企業等はない.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390009483099776000
  • NII論文ID
    130008154746
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_62
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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