腹腔鏡下子宮全摘出後に可逆性後頭葉白質脳症(PRES)を発症した例

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タイトル別名
  • A case of posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) after total laparoscopic hysterectomy
  • フククウキョウ カ シキュウ ゼン テキシュツ ゴ ニ カギャクセイ コウトウ ヨウ ハクシツ ノウショウ(PRES)オ ハッショウ シタ レイ

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抄録

<p>可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome;PRES)は後頭葉の白質を中心に一過性の脳浮腫をきたし,痙攣,意識障害,視野障害などの症状をきたす.今回,子宮筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘出術後にPRESを発症した1例を経験したので報告する.患者は48歳,未妊,既往歴・家族歴はとくになく,過多月経を主訴に近医を受診し子宮筋腫を認めた.前医にてGnRHアンタゴニストにより偽閉経療法を施行され,手術による加療を希望し当院へ紹介となった.骨盤MRIでは最大6 cm大の多発筋腫を認め,腹腔鏡下子宮全摘出術を施行した.術前の血圧が160/97 mmHgと高値であったが,高血圧の既往なく経過観察とした.術中には195/101 mmHgまで上昇したが,ニカルジピン塩酸塩の静脈内投与により降圧をはかった.術後3時間後と8時間後に収縮期血圧が200 mmHg前後となったが,自覚症状はなく降圧薬頓服で経過観察とした.術後13時間の時点で収縮期血圧>200 mmHgが持続し頭痛も出現したため,降圧薬の点滴による持続投与を開始したが軽快せず,術後15時間後にJCSIII-200の意識障害,強直性痙攣を認めた.頭部CTで頭頂葉から後頭葉に低吸収域を認め,MRIで同部位にDWI高信号を認めたためPRESを疑った.降圧療法を継続したが,術後16時間後に再度強直性痙攣を認めたため抗てんかん薬を開始し,その後は痙攣なく経過した.PRES発症後より視力障害・視野障害を認めたが,術後30時間後ごろより血圧のコントロールが安定し症状は改善傾向となった.また術後7日目に撮影した頭部MRIでは病変は縮小していた.術後,血圧高値が持続し突然の意識障害・痙攣を認めた場合は,PRESの発症を念頭において速やかに原因精査と治療を行うことが必要である.〔産婦の進歩74(1):136-141,2022(令和4年2月)〕</p>

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