スリランカ及びタイにおける雑穀類遺伝資源の探索

書誌事項

タイトル別名
  • Collection of Millet Germplasm in Sri Lanka and Thailand

説明

雑穀類は, イネ, ムギ等のような多量生産を行う穀類以外を総称していう言葉である。今回の探索収集では, 禾穀類の中の小粒作物 (アワ, キビ, ヒエ等, ミレットと言われる) を中心に, モロコシ, トウモロコシ等も収集した。ミレットは, 古くからユーラシア大陸或はアフリカ大陸において広く栽培され, 受け継がれてきたが, 近年, 生産性や収益性の高い作物に置き代わり, 急速に耕地から姿を消しつつある。今回は, 特にインドを中心としていまなお広く栽培されているシコクビエ, アワ等のミレットを中心に, 数種類の雑穀類をスリランカ及びタイ北部から収集した。収集した系統のほとんどは各地域の農家において古くから栽培されてきた在来種である。本探索により, 48点のシコクビエ (Eleusine coracana), 23点のアワ (Setariaitalica), 6点のキビ (Panicum miliaceum), 8点のモロコシ (Sorghum bicolor), 9点のトウモロコシ (Zea mays) を収集した。また, ミレットとの混作作物或は隣接した畠の作物も一部収集した。全収集数は106点で, そのうち89点はスリランカで, 17点はタイで収集した。中部及び南部スリランカにおいて, 標高Omから約2,000mの地域を延べ1,475kmに渡り探索し, 作物の生育データと共に種子を収集した。スリランカにおいては, 植物遺伝資源センターが独自に探索収集を行っていたので, 同センターの収集リストを照合し, 探索集落に重複を生じないように配慮した。シコクビエは乾燥・半乾燥地帯の焼畑等において広く栽培されていた。収集したサンプルには穂の形や大きさ, 節の色等に変異が認められた。混作が多く, 混作作物にはアワ, ナ類等色々であった。キビの栽培を見かけることは非常に少なく, 主として農家の保存種子の分譲を受けた。豆類等隣接畑から収集したものもあった。シコクビエはいわゆる "うす焼き" あるいはペースト状にして食べるということであった。アワはお粥として食べるのが一般的のようであった。農家は雑穀, 野菜等の作物の種子をよく保存しており, 古くから集落に伝わる在来種が多かった。スリランカには今回を含めても未収集地域が多くあり, 今後とも収集が必要である。北部タイにおいてはミレットの食用としての栽培は急減していた。作期ではないこともあってか, 栽培畑に巡り会うことはなかった。小数部族の集落を訪ね, 農家が保存している穂や乾燥中の穂から種子を収集した。収集物はモロコシ, トウモロコシがほとんどであった。北部タイのミレット収集を計画する場合, 北西部のカレン族, 北東部のリス族等が住む, より深い山岳地帯に足を踏み入れる必要があると考えられた。

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