社会科教育,地理教育,防災教育の違いと接点

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Differences and cross points between social studies education, geography education and disaster education

抄録

<p>1. 本報告の目的  </p><p> 小学校および中学校での社会科、高等学校の社会科および地理歴史科の地理においては、従来から自然災害については扱われてきた。その一方で、2011年の東日本大震災を機に、安全教育と防災教育が文部科学省などにより見直されるようになり、これにより、2017年および2018年に公示された小学校、中学校および高等学校学習指導要領では、防災が学習内容に明示されるようになった。防災に関する学習内容は、社会科や地理歴史科だけでなく、理科、保健体育、技術・家庭、特別活動などでも行われる。このような教科をこえた防災教育の意義と、社会科としての防災教育および地理教育としての防災教育の意義がそれぞれあると考えられる。本発表では、その意義を防災教育全般、社会科教育および地理教育における防災教育との違いと接点という観点から明らかにすることを目的とする。 </p><p>2.防災教育 </p><p> 学校教育においての防災教育は安全教育の一つとして位置づく。すなわち安全教育が生活安全、交通安全、災害安全に細分され、災害安全がさらに細分化され防災教育と防災管理に分けられるのである。安全教育に含まれる防災教育の目標は、学校種ごとに掲げられ、小学校では「日常生活の様々な場面で発生する災害の危険を理解し、安全な行動ができるようにするとともに、他の人々の安全にも気配りできる児童」、中学校では「日常の備えや的確な判断のもと主体的に行動するとともに、地域の防災活動や災害時の助け合いの大切さを理解し、すすんで活動できる生徒」、高等学校では「安全で安心な社会づくりへの参画を意識し、地域の防災活動や災害時の支援活動において、適切な役割を自ら判断し行動できる生徒」が防災教育の目標とされる。この防災教育の目標に鑑み各教科での防災教育が展開される。 社会科教育は小・中・高等学校を含むのであるが、本稿では中学校社会科地理的分野と高等学校の地理は地理教育が担うものとする。 </p><p>3.社会科における防災教育 </p><p> 小学校社会科においては、自然災害から地域の安全を守るための諸活動(4年生)が学習の目標の一つとなり、5年生では自然災害の発生や自然災害からの防災対策を学び、さらには6年生で自然災害からの復興などが学ばれる。このように、小学校の社会科では、安全ということを重視し、そのために自然災害などからどのように身を守り、国などがどのようにどのような防災対策をとっているのかといったことが学ばれる。 </p><p>4.地理教育における防災教育 </p><p> 地理で防災を扱う意味として、地理それ自体が人間と自然環境との相互依存関係を扱うので防災との親和性が高いことがあげられる。そのため、中学校社会科地理的分野では、日本の地形や気候などの特色から自然災害と防災の取り組みなどを基に、日本の自然環境に関する特色を理解する学習となる。高等学校「地理総合」では、持続可能な社会をめざしての自然環境と防災を学習する。 </p><p>5.防災教育における社会科教育、地理教育の相違点 </p><p> 全教科にかかわる防災教育は、安全性が基盤となる。小学校の社会科では安全教育の一環として自然災害などから身を守ることが強調される。一方で地理教育では、自然災害に基づきながら地域の特徴をとらえ、防災を考えようとする。安全性を目的とする防災教育、地域の特徴をとらえるための防災および地域の特徴を踏まえた防災を考えようする地理教育での防災教育は、防災教育の位置づけに相違はみられるものの(社会科教育がその橋渡し)、身を守り、将来の社会を構築していくことについては接点がみられる。 文献:谷田部玲生(研究代表) 2018 『社会科における小・中・高一貫の防災教育』教科書研究センター.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390010292768862336
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_85
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ