地方総合病院における医療従事者確保の動向

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タイトル別名
  • Trends in recruiting medical staff in general hospitals
  • a case study of Joetsu area and hokushin medical area
  • 上越および北信医療圏の事例

抄録

<p>日本では医療資源の地域偏在が改善されず、近年では医療従事者の確保が厳しさを増しており、医療提供体制の維持が喫緊の課題となっている。その深刻さは、従来指摘されてきた過疎地域のみならず、総合病院の医療従事者不足の段階にも達している。そこで本報告は、一般の入院治療を提供する圏域である上越および北信医療圏を対象地域とし、それぞれの二次医療圏に立地する総合病院を事例に、医療従事者確保の実態と課題を明らかにすることを目的とする。聞き取り調査は、2021年10月に上越医療圏のA病院と北信医療圏のB病院で実施した。また、二次医療圏における医療提供体制を把握するため、新潟県および長野県地域保健医療計画や関係資料等を参照した。 上越医療圏は上越市、妙高市、糸魚川市で構成され、新潟県南西部に位置する(図1)。新潟県内に設定された7つの二次医療圏の一つで、人口は259,195人(2020年国勢調査)、人口10万人当たりの病床数は1,192.92(日本医師会JMAP、2021年時点)と、県央医療圏と魚沼医療圏に次いで低い。 北信医療圏は飯山市、中野市、下高井郡、下水内郡で構成され、長野県北部に位置する(図1)。長野県内に設定された10の二次医療圏の一つで、人口は82,543人(2020年国勢調査)、人口10万人当たりの病床数は997.06(前掲と同じ)である。 いずれの医療圏も、北陸新幹線開業によって首都圏および北陸地域との移動時間が短縮されたことにより、県外から医師を誘致しやすくなった事例病院は医師を確保するために、北陸新幹線開業を契機として「県外医師誘致強化」を進めてきたことが大きな特徴である。日本有数の豪雪地帯に位置する病院が多い医療圏であるため、積雪時でも定時運行が期待できる新幹線の存在は、外来担当医師を誘致するうえで重視される条件である。 上越妙高駅に近接するA病院では、常勤医14名、非常勤医17名の計31名の医師のうち11名が新幹線通勤である。非常勤医は首都圏から、常勤医(週末のみの利用も含む)は近県からが多い。 飯山駅に隣接するB病院では、2018年ごろから医師確保専任担当者を配置し2019年に常勤医28名まで増やした。2021年10月現在、常勤医7名、非常勤医12名の計19名が新幹線で通勤している。非常勤医は、首都圏だけでなく京都や名古屋から通勤していることが特徴である。常勤医はA病院と同様に、近県からの新幹線通勤がみられる。 A、B病院ともに、新幹線で通勤する医師が一定数確保されており、地域医療の提供体制を充足することに貢献している。しかし、新幹線通勤により通勤費の支給額は多く、病院の経営を圧迫している。条件不利地域に対する各種財政措置により新幹線通勤費の一部を補填することはできるものの、医師すべてが新幹線通勤することは予算上不可能で、新幹線に過度に依存せず、病院近くに医師が定住する対策を強化することも必要と考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390010292776686976
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_224
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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