心理学におけるジェンダー研究の未来他分野との交流を通して考える

抄録

<p>ジェンダーの視点に立つ研究やジェンダーに関する研究は,学問体系の中でどのような位置を占めているだろうか。ジェンダーによる格差や不平等の原因や現象,その影響などを研究する分野を独立した一つの分野とみなせば,ジェンダー「学」ということができる。あるいは,ジェンダー研究を,社会学,政治学,経済学,心理学,歴史学などの学際領域に生じた学問とみなすこともできる。あるいは,それぞれの学問分野の関連または応用領域とみなすこともできる。果たして現状はどうだろうか。ジェンダー「学」を標榜する研究科やセンターもあるが,ジェンダーの学位を出す機関は非常に少ない。以前には科学研究費の審査区分として,どの学問分野にも属さない独立したジェンダーの区分(細目)があったが,現在,ジェンダーはごく一部の学問分野に「ジェンダー関連」の小区分があるのみである(心理学にはない)。すなわち,ジェンダー研究は日本の学問体系においては,独立した学問分野でもなく学際的分野でもなく,一部の学問分野の関連領域にしか過ぎないのである。心理学分野では,諸外国に先駆けて1960年代からジェンダーに関する研究(たとえば性役割の研究など)が始まり,かなり蓄積されてきたと言える。しかし,ジェンダー研究はオーソドックスな心理学体系に組み込まれるまでには至っていない。日本心理学会には発表部門として「ジェンダー」が設置されているが,ジェンダー部門での発表は減少傾向にあり,むしろ,様々な部門に分散した形で増加している傾向がみられる。このような状況は,先述の科学研究費の審査区分として心理学分野に「ジェンダー関連」がないことと関係しているのだろうか。心理学におけるジェンダー研究の今後を考えるうえで,他分野の状況に学ぶことは有益だろうと考える。このシンポでは,各分野でジェンダー研究の位置づけ,科研費の申請,ジェンダー研究者の特性(性別,経歴,就職先,論文数など)の実態などについて情報交換を行い,今後のジェンダー研究を展望してみたい。このシンポは人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(GEAHSS)のアウトリーチ活動として位置づけ,ギース加盟学協会からも話題提供をしていただく。</p>

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