胸腰椎骨折患者における強直性脊椎疾患と大動脈損傷の合併に関する臨床的検討

DOI
  • 米本 直史
    埼玉医科大学 総合医療センター 高度救命救急センター 彩の国東大宮メディカルセンター 整形外科
  • 井口 浩一
    埼玉医科大学 総合医療センター 高度救命救急センター
  • 澤野 誠
    埼玉医科大学 総合医療センター 高度救命救急センター

書誌事項

タイトル別名
  • A study on the association between ankylosing spinal disorder and aortic injury in patients with thoracolumbar fracture

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抄録

緒言:強直性脊椎疾患(Ankylosing spinal disorder:以下ASD)患者における胸腰椎骨折の合併症として大動脈損傷が知られているが,その頻度は報告されていない.本研究の目的は,胸腰椎骨折における大動脈損傷の合併頻度を調べ,ASD患者群と非ASD患者群を比較検討することである.<br> 方法:2014年から2017年に当院で手術治療した胸腰椎骨折143例を対象とした.14例はASD群,129例は非ASD群であった.<br> 結果:大動脈損傷は6例に見られ,4例がASD群,2例が非ASD群であった.大動脈損傷合併率はASD群で28.57%,非ASD群で1.55%であった.ASD群のほうが有意に合併頻度は高く,Odds ratioは25.4倍(95%信頼区間:4.13~156)であった.ASD群の方が非ASD群より大動脈石灰化が強い傾向にあり,大動脈損傷の部位は大動脈石灰化の部位との重複がみられた.AO Spine Thoracolumbar Injury Classification Systemによる骨折型分類では,大動脈損傷患者はB2とB3に限られており,B3の方が大動脈損傷を合併しやすい傾向にあった.ASD患者における骨折形態は,前方伸延損傷(B3)が多数を占めていた.<br> 結論:ASDは胸腰椎骨折における大動脈損傷合併の有意な予測因子であった.ASD患者が大動脈損傷を合併しやすい要因として,大動脈石灰化や前方伸延損傷が考えられた.本研究は単施設の救命救急センターに搬送された重症外傷患者を対象としており,対象患者の偏りが結果に影響を与えた可能性に留意しないといけない.

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