機械学習による薬物性肝障害の予測~大規模副作用報告データベースの活用~

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抄録

<p>【目的】</p><p>薬物性肝障害(Drug-Induced Liver Injury; DILI)は、臨床試験中止及び市販後撤退の主な原因となっている。DILIの中には特異体質性薬物性肝障害(idiosyncratic DILI; iDILI)も多く、医薬品の開発段階において動物試験や臨床試験では発見することが難しい。そこで、DILIを予測する新たなアプローチの開発が求められている。本研究では、副作用の自発報告データベースを活用し、市販後の臨床現場におけるDILIに着目し、医薬品の構造情報からDILIを予測する機械学習モデルを構築することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>医薬品情報の抽出には、FDA Adverse Event Reporting System(FAERS)の1997年第4四半期2020年第2四半期までに報告されたデータを用いた。重複報告の削除、医薬品名の統一のため、一般財団法人日本医薬情報センターがFAERSをクリーニングしたJAPIC AERSを用いた。対象副作用は、MedDRA ver23.0の標準検索式の「薬剤に関する肝障害」とした。DILI陽性定義はシグナル検出法であるProportional Reporting Ratios法によりシグナルが検出された医薬品とした。DILI陰性定義はDILIの報告が1件も無い医薬品とした。陽性・陰性に該当する医薬品をJAPIC AERSから抽出し、予測モデル用のDILIデータセットを作成した。説明変数として、化学構造情報である分子記述子を使用した。分子記述子計算ソフトであるalvaDescにより2D記述子を算出し、分子記述子同士の相関係数が大きいものは削除した。機械学習のアルゴリズムの1つであるRandom Forest(RF)によってDILI予測モデルを構築した。</p><p>【結果・考察】</p><p>JAPIC AERS(陽性:447剤、陰性:207剤)を用いて、RFによる判別モデルを構築したところ、モデルの性能を示すArea Under the ROC Curve(ROC-AUC)は0.78程度であった。副作用自発報告データベースからシグナル検出によってDILI発症リスク陽性・陰性物質を抽出し、機械学習による判別モデルを構築する手法は、医薬品の化学構造情報のみから効率的にDILIの予測を行うことができると示唆された。</p><p>【結論】</p><p>今回の研究では、副作用自発報告データベースと機械学習を活用することで、DILIの予測の新たなアプローチへの可能性が確認できた。本手法は医薬品開発のスクリーニングや臨床現場における薬物性肝障害の起因薬同定などへの活用が期待される。</p>

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