書誌事項
- タイトル別名
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- Origins of the Spirit of Masuichi Midoro, Founder of ANA Holdings, Inc.
- ANA ソウギョウシャ・ミドロ マスイチ ノ ソウギョウシャ セイシン ノ コンゲン
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説明
本稿は,大手航空会社ANAグループ(以下ANA)の創業者・美土路昌一(みどろますいち)がどのような人物で,どのような精神の持ち主であったかを論じることにより,ANAの現代経営に今なお影響力をもつ創業者精神の根源を明らかにするものである。1886年,岡山県苫田郡美作(みまさか)(現在の津山市)に生まれた美土路が,それまで勤めてきた朝日新聞社を退社し,敗戦で職を失った航空業界関係者のための救済会社の会長に就任したのは60歳のときだ。通常であれば社会から引退する年齢で,新たな業界のリーダーとなった美土路の極めて稀な経歴を踏まえて,単に個人の人柄に焦点を当てる資性アプローチに留まらず,史学的アプローチを複合させるチャレンジを行った。こうした独自性の高いアプローチを試みたのは,半世紀以上にものぼる壮絶な人生体験が,美土路の個人的な信念・思想・哲学の構築に大きな影響を与え,しいてはANAの創業者精神につながったと考えるからだ。資性アプローチ及び史学的アプローチを取るにあたり,現地の資料館や全国古書店から発掘した資史料,美土路が執筆した全書籍,出版元で閲覧禁止となっている700ページにわたる美土路の回顧録など貴重な資料を入手し,丹念に美土路の人生をたどった。その結果,美土路は,1)生まれる前から実の父と義父の2人の父を持つという稀有な出生で,偉大な国学者で宮司でもあった義父から強い精神的感化を受けたこと,2)教育熱心な母や学問の盛んな津山の地で,言論の素養を得たこと,3)軍事に傾倒していく時代において,ある時は知恵で権威を出し抜き,ある時は言論で正面から闘ったこと,4)第二次世界大戦下では,自らの生き方を凍結し,桎梏と業火の苦しみを味わい,自責の念を生涯持ち続けたこと,が分かった。そして,その苦しみが美土路の信念・思想・哲学を確固たるものにしたことを論じた。以上の資性アプローチ及び史学的アプローチによって明らかになった美土路の精神の本質を,「高潔」,「武より文」,「権威への反骨」,「公への使命感」の4つのキーワードに落とし込んだ。なお,本稿では先行研究を通して創業者精神を「創業者の持つ信念・思想・哲学」と定義している。よって上記の4つのキーワードを創業者精神の源とした。日本を代表する航空会社の創業者でありながら,ほとんど先行研究のない美土路昌一の創業者精神の源を明らかにしたことは,意義深い。
収録刊行物
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- 青山社会科学紀要
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青山社会科学紀要 50 (1/2), 21-51, 2022-03-01
青山学院大学大学院経済学・法学・経営学三研究科
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390010293006074752
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- NII書誌ID
- AN00008972
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- DOI
- 10.34321/22260
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- ISSN
- 02863901
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可