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- 海老根 剛
- 大阪市立大学
書誌事項
- タイトル別名
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- The emergence of "ignorant" spectators : Bunraku theater and its spectatorship after the opening of the Yotsubashi-Bunrakuza
- ムチナ カンキャク ノ タンジョウ ヨツバシ ブンラクザ カイジョウゴ ノ ニンギョウ ジョウルリ ト ソノ カンキャク
- 「無知な観客」の誕生 : 四ツ橋文学座開場後の人形浄瑠璃とその観客
- 「 ムチ ナ カンキャク 」 ノ タンジョウ : ヨッツバシ ブンガクザカイジョウ ゴ ノ ニンギョウ ジョウルリ ト ソノ カンキャク
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説明
本論文の主題は、昭和五年一月の四ツ橋文楽座の開場前後に生じた人形浄瑠璃を取り巻く環境の変容を、観客という観点から考察することである。四ツ橋文楽座の開場は、人形浄瑠璃の劇場にそれまでとはまったく異なるタイプの新しい観客をもたらした。本論では、この新しい観客を二重の無知によって特徴づけられる観客として定義したうえで、彼らがどのように人形浄瑠璃の舞台と向き合ったのかを三つの観点から考察する。第一に、興行主である松竹が新しい観客をどのように理解し、彼らにどのようにアプローチしたのかを、プログラム冊子の分析を通して明らかにする。第二に、四ツ橋文楽座がもたらした劇場の近代化が新しい観客たちの観劇態度にいかなる影響を与えたのかを検討する。第三に、新しい観客の観劇態度が同時代の観察者によってどのように論じられていたのかを確認し、無知な観客に特有の真面目さについて考察を加える。これらの検討を通して、本論は、四ツ橋文楽座に登場した無知な観客たちのあいだで、古典芸術として人形浄瑠璃に向き合う観劇態度が形成されたことを指摘し、四ツ橋文楽座が新旧の観客が共存する混淆的な空間であったことを確認する。
収録刊行物
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- 人文研究
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人文研究 73 32-13, 2022-03-31
大阪市立大学大学院文学研究科