炭酸塩コンクリーションのカルサイトシーリングによる水理・力学特性について

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  • Study on the hydro-mechanical characterization by calcite sealing of the calcareous concretion

抄録

<p>コンクリーションとは堆積岩中に認められる球状岩塊で、堆積物の粒子間隙に鉱物が析出・充填することによって硬く凝結した岩塊のことを指す。このコンクリーションの中でも、炭酸カルシウムを主成分とするものは、死滅した生物遺骸から供給される有機酸の拡散と空隙水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応で急速に形成されることが明らかとなっている[1]。この急速な炭酸カルシウムの沈殿と堆積物の空隙をシーリングするメカニズムを、地下空洞やトンネルなどの建造物における、岩盤地下水亀裂のシーリング技術に応用することなどが検討されている。これまでの研究から、コンクリーションの内部におけるカルシウムなどの濃度が概ね一定に分布することが判明しているが[2,3]、一方で炭酸カルシウムのシーリングに伴う透水特性や硬度特性などの水理・力学特性について、定量的に検討された例は未だにない。  本研究ではコンクリーションの材料学的特性を把握するために、コンクリーションの内 部と周辺母岩を対象に組織の観察のほか、空隙率測定、硬度試験、透水試験等を実施した。試験に用いた試料は神奈川県三浦半島に分布する新第三紀葉山層群中に産するコンクリーションと、岐阜県の新第三紀瑞浪層群中に産するコンクリーションである。  コンクリーション内部の構造や組成の観察を目的として、電子走査顕微鏡(SEM)での 観察や薄片の作成・観察を行った。透水特性の検討のために乾燥重量と湿潤重量を計測し空隙率を算出した。加えてコンクリーション内部と母岩部から直径5cm、厚さ約3㎝の試料をコアリングし変水位透水試験により透水係数を測定した。硬度試験はエコーチップ(超鋼製のボールチップを岩石表面に打撃し、その落下速度と跳ね返り速度から硬度を算出する測定装置)を用い、切断研磨した岩石表面で測定を行った。また同時に一軸圧縮試験を実施した。  薄片観察及び電子顕微鏡による岩石内部の空隙状態の観察の結果、コンクリーション内部は、微細な空隙までが炭酸カルシウム(カルサイト)によって充填・シーリングされていることが確認された。この炭酸カルシウムの充填によって、空隙率は低下し、低いものでは5%以下にまで低下する。エコーチップでの硬度を測定した結果、コンクリーションは、周辺母岩よりも硬度が高く、炭酸カルシウムのシーリングによって緻密さが増していることが示された。さらに透水試験の結果、透水係数は10-12(m/s)オーダーとほぼ花崗岩に匹敵する値を示した。これらの結果から、コンクリーションが風化に強いのは、堆積後の早い段階から炭酸カルシウムによるシーリングが進行し、透水性を低下させるとともに、緻密度も増し、物理的及び化学的風化に対して耐久性を有するからだと考えられる。このようなシーリング効果は、長期のシーリングとしても機能することが期待され、今後、工学的な応用化にこれらの情報を活用していく予定である。 [1] Yoshida,H., Ujihara,A., Minami,M., Asahara,Y., Katsuta,N., Yamamoto,K., Sirono,S., Maruyama,I., Nishimoto,S., Metcalfe,R.(2015) Early post mortem formation of carbonate concretions around tusk-shells over week-month timescales. Scientific Reports, [2] Yoshida,H., Yamamoto,K., Minami,M., Katsuta,N., Sirono,S., Metcalfe,R. (2018) Generalized conditions of spherical carbonate concretion formation around decaying organic matter in early diagenesis. Scientific Reports [3] Yoshida,H., Asahara,Y., Yamamoto,K., Katsuta, N., Minami,M., Richard,M. (2019) 87Sr/86Sr age determination by rapidly formed spherical carbonate concretions. Scientific Reports</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390010765191395968
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_174
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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