システィーナ礼拝堂における芸術空間の変遷

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  • スペースデザインの視点からの考察

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本研究はシスティーナ礼拝堂の芸術空間の変遷を宗教的,政治的,図像学的な視点からだけではなく,インテリア空間として,スペースデザインの視点から考察したものである。そのために,新教皇即位のたびに変化した壁面装飾の4段階を各装飾プランに従って,礼拝堂のインテリア模型を約1/100サイズで制作した。そして,この三次元的に構成された模型を利用し,天井および側壁のフレスコ壁画連作相互の関連性を,スペースデザインの視点とキリスト教図像学の視点から検討してみた。 その結果,礼拝堂のスペースデザインは4段階のうち第2段階と第4段階のフレスコ壁画制作を担当したミケランジェロの主導的構想によって,壁画空間に強力な時間軸が設定されたことがわかった。つまり,側壁に描かれた「モーセ伝」と「キリスト伝」連作は現在へとつながる歴史時代,天井画の「天地創造」連作は旧約聖書における神話時代,正面(主祭壇の奥)の「最後の審判」はやがて訪れる未来のイメージという明快な時間軸の上に再構成されたと考えられるのである。システィーナ礼拝堂のインテリア装飾は決して第1段階からトータルに決定されたものではなく,ミケランジェロの関与によって《キリスト教図像学の一貫性》と《様式表現上の変化》(ルネッサンスからバロック)の両者が効果的なスペースデザインとして統合,再構築されたといえよう。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390010776362194560
  • DOI
    10.50981/jasis.20.0_29
  • ISSN
    24355542
    18824471
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Allowed

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